なぜ株価はV字回復? コロナショックを分析しよう

なぜ株価はV字回復? コロナショックを分析しよう
学び×これからの株式投資(2)マネックス証券の益嶋裕さん
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62539180R10C20A8000000/

『新型コロナウイルスまん延による世界株式のパニック売りは、いま振り返ると3月がピークでした。米国のウォルト・ディズニー、ボーイング、コカ・コーラなど名だたる30銘柄で構成する株価指数、ダウ工業株30種平均は3月16日に過去最大の下落幅となる2997ドル安を記録。下落率は12.9%で、1987年10月19日のブラックマンデーの22.6%に次ぐ歴代2番目の大きさでした。

■コロナ級ショックは「10年に1度」

日本の主力225銘柄で算出する日経平均株価はどうだったでしょうか。下げ幅が最も大きかったのは3月13日の1128円安ですが、これは歴代13番目。意外にも1日の下落率では20番目までに入っていません。とはいえ、3月9~13日の1週間の下落幅は過去最大でしたから、「10年に1度」クラスのショック相場だったといえそうです。

主要国の株価指数の過去15年の推移を眺めても「10年に1度」が見て取れます。グラフはおおむね右肩上がりですが、世界共通のへこみが2カ所ありますよね。08年のリーマン・ショックと今回のコロナショックです。投資家心理を測る指標とされる「恐怖指数」も3月にはリーマン当時とほぼ同水準まで上昇しました。それだけ投資家の間でパニックが広がっていたのです。

■アナリストも完全に想定外

アナリストの私にとっても、この急落は完全に想定外で、19年末のリポートで予想した株価の上昇シナリオを撤回せざるを得ない状況でした。「100年に一度の金融危機」といわれたリーマンのときでさえ今回のような移動制限はなかったわけで、新型コロナ危機を株式市場は深刻に受け止めたのです。

もっとも、若い世代の皆さんが老後に向けて資産形成するなら投資期間は数十年に及びますから、これからもコロナ級のショック相場をほぼ確実に経験するでしょう。

ちなみに日経平均の下落率の歴代上位をみると、87年のブラックマンデー翌日、2008年のリーマン・ショック、11年の東日本大震災、1953年のスターリン暴落、16年の英国EU離脱決定、01年の米同時多発テロなどが並んでいます。なんだか歴史の教科書みたいですね。米同時多発テロは私が高校生のころ。超高層ビルに航空機が衝突するショッキングな映像がテレビで繰り返し流されていた記憶があります。

コロナショックの特徴は、株価へのマイナス影響が短期間で過ぎ去ったことです。主要国の株価指数はいずれも急落分の8割から9割をすでに取り戻しました。感染拡大が続くブラジルのボベスパ指数ですら上昇していて、市場関係者の間でも「今の株価はバブルではないか」との指摘は多いのです。コロナ感染の収束が見えず、景気に不安があるのになぜ株価はV字回復したのでしょうか。

感染「第2波」の懸念はあるものの、まずは先進各国がロックダウン(都市封鎖)や国家間の渡航制限など前例のない対策でコロナ封じ込めを進めたことが大きいと思います。さらに世界の製薬会社が治療薬やワクチンの開発を競っており、期待を高める治験結果などが報じられています。

■世界の財政出動は1000兆円超え

もうひとつは各国政府と中央銀行による迅速な財政出動と金融緩和です。国際通貨基金(IMF)によると、コロナ対策の世界の財政支出は1000兆円を超えました。これは過去最大の規模で、ここまでの金額になるとは当初だれも想定していなかったと思います。

危機の原因となった金融機関の救済をめぐって政治論争が繰り広げられ、米国株の回復に1~2年程度かかったリーマン当時とは、おのずと状況が異なります。5月の米小売売上高は「リベンジ消費」で前年同月比18%増でした。現金給付などの効果が出たのです。

さらに「ウィズコロナ」への期待があります。主要な株価指数のうち、ハイテク株が多い米国のナスダック総合株価指数は7月に過去最高値を更新しました。「感染防止のための非接触がインターネット社会の進展を加速させる」との読みで「GAFAM」と総称されるアルファベット(グーグル)、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コムといったITプラットフォーマー銘柄などに買いが集中しているのです。

ウィズコロナの世界で成長するビジネスと逆風が吹くビジネスをどう見極めるか。目下のアナリストの最大の関心事です。手がかりはコロナが猛威をふるった2020年4~6月期の企業決算にあります。次回は決算発表と株価の反応について見ていきましょう。』