〔中東・アフリカ関連〕

イスラエル情報相、バーレーンなどとも正常化を示唆
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62717100X10C20A8910M00/

『【ドバイ=岐部秀光、イスタンブール=木寺もも子】イスラエルのコーヘン情報相は16日、軍のラジオ放送で、バーレーン、オマーン、スーダンとも国交を結べるとの見通しを示した。アラブ首長国連邦(UAE)との正常化合意を発表した直後で、イスラエルと敵対してきたイスラム諸国に混乱が広がりかねない。

UAE大使館の前でイスラエル国旗を燃やして国交正常化に抗議するイランの人々(15日、テヘラン)=WANA・ロイター
オマーン外務省は17日、アラウィ外務担当相がイスラエルのアシュケナジ外相と電話で会談したと発表した。パレスチナとの和平交渉再開を呼びかけたと説明した。パレスチナ自治政府の主流派ファタハの幹部とも電話で協議したという。

イスラエルのリブリン大統領は17日、ツイッターを通じ、UAEの事実上の指導者であるアブダビ首長国のムハンマド皇太子に書簡を送り、エルサレムに招待したと明らかにした。イスラエルのネタニヤフ首相は同日、UAEとの間で航空機の直行便の就航に向け、準備を進めていると説明した。

コーヘン氏は「より多くの湾岸、アフリカのイスラム教国と合意ができるだろう」と述べた。バーレーンやオマーンはすでに正常化合意への支持を表明した。両国はUAE、サウジアラビアなどを含めた6カ国で湾岸協力会議(GCC)という地域協力の枠組みを形成しており、外交でも同一路線を採用しやすい。

イスラエルとUAEの正常化合意は米国による対イラン包囲網構築の一環だとみられている。アラブ世界で初めてイスラエルと国交を結んだエジプトも今回の合意に賛意を表明した。イランのロウハニ大統領は15日「UAEは大きな過ちを犯した」と激しく反発した。

これまでイスラエルと国交を結ぶイスラム諸国が少なかったのは、イスラエルが1948年の建国時にパレスチナの土地を奪い、住民を追放したと非難してきたためだ。パレスチナの住民の多くはイスラム教徒だ。ユダヤ教徒が主体のイスラエルとは宗教が異なる。

なかでもアラブ諸国はイスラエルと国境を接するエジプト、ヨルダンが国交を持つだけ。湾岸諸国ではUAEが初めてイスラエルと外交関係を正常化することになる。

アラブ諸国には含まれないが、イスラエルと国交のあるイスラム諸国の一つであるトルコはUAEとイスラエルの正常化合意を非難している。トルコはパレスチナを支援する姿勢を強調し、イスラム世界で一定の発言力を維持する狙いだ。

アラブの一般市民にも正常化合意への受け止め方に温度差がある。UAEの国民の年齢の中央値は32歳。2000年のパレスチナにおける第2次インティファーダ(反イスラエル闘争)も遠い記憶だ。多くの若者は、イスラエルとの国交正常化よりも7月の火星探査機打ち上げに興奮した。

合意の発表後、パレスチナなどで反UAEデモが起きた。だが、同国のドバイに住む大学生(20)は「パレスチナ問題はアラブの課題の一つにすぎない」と話す。UAE指導者がこれまで考えられなかったイスラエルとの正常化に踏み切ることができた背景にはこうした価値観の変化がある。

イスラエルへの対応をめぐり、イスラム社会に混乱が広がれば、地域の紛争や政治対立の行方に影響を与えかねない。

イラクの民衆の多くは今年の猛暑も電力なしで過ごすことを強いられている。戦争やテロで破壊された発電所や送電設備の復旧は、ほとんど進まない。宗派・民族対立で政府は機能不全に陥ったままだ。大きな権力を握るのはイランと同じイスラム教シーア派で、スンニ派の不満は大きい。

首都ベイルートでの爆発で経済危機が深まるレバノンも似た構図だ。イランを後ろ盾とするシーア派が強力で、サウジの後押しを受けるスンニ派、欧米に近いキリスト教徒などと主導権を争う。親イラン政権では米欧などからの経済支援を望みにくく、辞任を表明したディアブ首相の後任選びは難航している。

19年に本格化したリビア内戦はトルコと、エジプト・UAE連合などアラブ勢の代理戦争の様相を呈してきた。イエメンやシリア内戦でも対立構造の論理が働く。』