「それでも日本は変わらない」

ユーグレナ出雲氏の達観「それでも日本は変わらない」
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00181/081400011/?n_cid=nbpds_top3

『-本日は「コロナ禍から日本を再興するには」というテーマでお話していただきたいと思っています。

出雲充ユーグレナ社長(以下、出雲氏):日経ビジネスでは毎年のように「日本を再興するにはどうすればいいか」というテーマで著名人を登場させていますよね。ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長や、ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長、三菱ケミカルホールディングスの小林喜光会長など有名経営者をよくお見かけします。

 同じような企画を続けて約30年がたちました。しかし日本は再興することなく、ついに「失われた30年」を迎えてしまいました。今年も同じような企画の記事を載せても、何も変わらないのではないですか?

-コロナ禍でも変わりませんか?

出雲氏:変わりそうな感じ、します? コロナ禍をきっかけに急浮上した「9月入学」の議論は立ち消えになりそうです。緊急事態宣言が解除されてからは普通に出社する人が増えていますし、職場では依然としてハンコが広く使われています。コロナ禍が終息すれば、元の生活に戻るのではないですか。

 で、今日は何の取材なんでしたっけ。

-コロナ禍からの日本の再興です。

出雲氏:そうでした。30年にわたって変革できていなくとも、諦めずに「何だよ、この状況は」と指摘し続けることは意味があると思っています。気を取り直しましょう。

-よろしくお願いします。

出雲氏:スイスのビジネススクールIMDが毎年まとめる「世界競争力ランキング」によると、1992年まで4年連続首位だった日本は、その後順位を下げ、2020年版では調査対象の63カ国・地域のうち、34位と最低を更新しました。約30年間、何一つ進歩せずに浪人生活を続けたことになります。

学生だったら「30浪」なんてあり得ないじゃないですか。普通は自分の弱点を認識し、改善するんだと思うんです。

-何が日本の弱点だと思いますか?

出雲氏:起業家精神が弱いことと、デジタル化が遅れていることです。残念ながらIMDの調査では日本の「起業家精神」は最下位の63位で、「デジタル技術のスキル」は62位です。

-確かに日本人の起業家精神は弱そうです。それでも出雲さんの出身校である東京大学は大学発ベンチャーの数で国内の他校を圧倒しています。出雲さんにも取材にご協力いただいた日経ビジネスの特集「東大の力」でも東大で起業が盛んなことは詳報しましたよ。

出雲氏:東大の場合、各務茂夫教授という卓越した先生が、起業家精神を教える授業やインキュベーション施設、ベンチャーキャピタルなど、一から十まで起業家を輩出するためのエコシステムを学内に地道にそろえたおかげです。日本の場合、このやり方しかないでしょうね。

-つまり日本人は一般的にアニマルスピリット(血気)が乏しく、一から十までお膳立てしないと、大学発ベンチャーは盛んにならない、と。

出雲氏:でしょうね。日本人の価値観や気性にあらがっても仕方ありません。大学の研究者や学生たちの起業を促すためにも、東大モデルを他校に広げていく必要があります。大学発ベンチャーが増えれば国際競争力が高まり、日本が復活するというシナリオは十分にあり得ます。私もそのためにできることは何だってやろうと思っています。企業経営の傍ら投資家として大学発ベンチャーを応援しているのもそのためです。

出雲氏は起業家を志す後進を支援するエンジェル投資家としても知られる
-分かりました。もう1つの弱点であるデジタル化の遅れについてはどうですか?

出雲氏:日本企業はデジタル技術を十分に活用できていないから労働生産性が低く、国際競争力が下がっています。

けれど日本は生産性が低いためにより多くの労働力を必要とし、結果として失業率が低く抑えられている。そんな見方もできます。

-「痛みなき改革」で30年間を失った
出雲氏:そう、まさにおっしゃる通りです。失業率を上げずにデジタルトランスフォーメーション(DX)を実行することは不可能です。低失業率というメリットを手放したくないから、デジタル化しない。これが日本株式会社の現状です。

-一方、デジタル化で世界をリードする米国では失業者が増えるなどして貧富の格差が拡大し、社会への不満が高まっています。もしかしたら日本のほうが幸せに暮らせる社会なのかも、とも思ってしまいます。

出雲氏:ということはデジタル化が遅れているということは、大した欠点じゃないんですよ。

-えっ? 日本の欠点じゃない?

出雲氏:はい。日本の生産性が低いというのは、許容できる欠点なんじゃないんですか。

-そして30年間、何も変わらなかった……。

出雲氏:おっ、すごい考察ですね。

-最終的にお話が一周回ってしまって、結論が出なかったじゃないですか。

出雲氏:いやいや、結論出たじゃないですか。日本は30年にわたって、実は失業率を抑えたまま、生産性を高めるという、本来両立しない「いいとこ取り」を目指して失敗してきた。日本人の総意として失業率を高めてまで、生産性を上げようという意思がそもそもなかったというのがオチなんじゃないですか。』

 ※ 生産性を高めて、「優勝劣敗」の「格差容認社会」よりも、「みんなが、そこそこ食えて、まあまあ大不幸なく生活していければ、それでいい…。」という社会の方を、目指した…。そして、それは見事に達成されてきた…。しかし、この先10年、20年、30年と、それが持続されていくとは限らない…、というところか…。