梅雨明けず、台風ゼロの7月 インド洋の異変影響か

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『記録的豪雨をもたらした梅雨前線の影響が長引き、関東甲信では13年ぶりに7月中に梅雨が明けなかった。台風の発生も観測史上初めてゼロとなり、同月の東日本と西日本で日照時間は戦後最短の見通し。インド洋の海面水温の高さが異例の7月の原因とみられ、地球温暖化の影響も指摘される。

東京都心は31日も雲が多く、すっきりしない空模様だった。関東甲信の梅雨明けが8月に持ち越しとなったのは2007年以来。同月4日までに梅雨明けしなければ観測史上最も遅い記録を更新する。近畿地方は31日、梅雨明けが発表されたが、平年より10日遅れ、過去3番目に遅かった。

今年は長梅雨に加え、日照時間の少なさも特徴だ。気象庁の過去20年間の観測データをもとに、東京都心の梅雨期間中の日照時間を比較したところ、今年は30日までで1日当たり2.3時間と最も少なかった。

関東甲信の平年の梅雨入りは6月8日、梅雨明けは7月21日で、この期間の東京都心の日照時間の平年値を計算すると、1日当たり4.0時間となる。今年はその半分ほどしかなく、梅雨の晴れ間がいかに少なかったかがうかがえる。30日までの暫定値で、1946年の統計開始以降、東日本と西日本の7月の日照時間としては最も短くなった。

農業への影響は深刻だ。都内のある農協では例年なら6月下旬から出荷を始めるブルーベリーが色づかず、出荷ができないという。いちじくや梨も一部は割れたり落ちたりして農家が廃棄している。秋に収穫するキャベツや白菜は、種をまく前に畑を耕す作業が長梅雨で開始できず、農協の担当者は「今年は出荷時期が遅れるかもしれない」と気をもむ。

今年は6月の台風2号を最後に、7月は台風が発生しなかった。東京大の中村尚教授は「台風の『ゆりかご』になるフィリピン近海の低圧部の活動が弱いため発生が少なくなっている」と分析する。

例年、フィリピン近海では上空に「モンスーントラフ」と呼ばれる気圧の低い部分が形成され、その南北で異なる風向きによって低気圧性の渦ができ、台風のもとになる。しかし、今年はインド洋の海面水温が平年に比べて高く、ここで発生した上昇気流が偏西風を弱め、渦ができにくくなっているという。

こうした異変は日本の長梅雨にも影響する。海面水温が高いインド洋で上昇気流が起きて対流活動が活発になると、隣接するフィリピン近海では逆に対流活動が弱まり、本来は夏に向けて北に勢力を伸ばす太平洋高気圧が南西に張り出す要因になる。その結果、梅雨前線を北に押し上げられず、日本の上空に長くとどまらせているとみられる。

インド洋の西側では19年冬から海面水温が高い「ダイポールモード現象」が起きていた。筑波大の釜江陽一助教は同現象が徐々に弱まり、西側の暖かい海水が東側に広がってインド洋全体の水温が高くなっていると分析。さらに「地球温暖化もインド洋の高温に関わっている」として、長期的な気候変動の影響を指摘する。

気象庁によると、太平洋高気圧は徐々に北への張り出しも強めている。同庁担当者は「週末から来週初めにかけて、東海より東でも梅雨明けするところが出てくるのではないか」と話している。』