アームの中国合弁、揺らぐ企業統治 ファーウェイに傾斜

アームの中国合弁、揺らぐ企業統治 ファーウェイに傾斜(2020/6/16 19:57)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60423920W0A610C2TJ2000/?n_cid=DSREA001

『ソフトバンクグループ(SBG)傘下の英半導体設計大手・アームで、中国の合弁会社の制御が困難になっている。英本社は合弁の経営トップの解任を表明したが、株式の過半数を中国の国有企業などが握る。最大顧客は中国の通信機器最大手・華為技術(ファーウェイ)だ。米中ハイテク摩擦の激化を背景に、両国の利害が絡む敏感な存在として注目を集める。

アームはスマートフォンなどモバイル機器向けプロセッサーの設計情報で世界シェア9割超を誇り、先端半導体開発のカギを握る存在だ。中国合弁アーム・チャイナはアーム本体のあらゆる知的財産にアクセスでき、中国企業への技術ライセンスの供与を担う。

英本社は9日に「不適切な行為が確認された」として合弁のアレン・ウー最高経営責任者(CEO)の解任を発表したが、合弁側は否定。内部対立の様相を呈している。

「ウーCEOは偉大なリーダーだ」。中国最大の対話アプリ「ウィーチャット」上で15日、合弁の公式アカウントが同氏への支持を表明した。幹部10人の署名入りで「業績は力強く成長している」とし、解任に抵抗する姿勢を鮮明にした。

英アームは2018年、中国広東省深圳に設立した現地子会社の株式の計51%を中国国有の銀行やネット大手などに売却した。同社幹部は合弁に切り替えた狙いについて、「現地で欧米企業に閉ざされていたチャンスにアクセスできる」と話した。

米国籍のウー氏は合弁設立時からトップとして中国事業をけん引する。関係者によると、特に「ファーウェイが最大の顧客として成長に貢献している」と話す。

日本経済新聞が入手した内部文書によると、合弁会社の董事会(取締役会)は9人で構成され、英本社が指名できるのは4人にとどまる。合弁は、自らは法的には中国の事業体であり、英本社にCEOを解任する権限はないと主張している。

トラブルの原因は明らかになっていない。ただアームに近い関係者は、米中摩擦が激化するなかで「中国での成長を追求する合弁の野心が、英本社を不安にさせている」と話す。

トランプ米政権は19年にファーウェイへの事実上の禁輸措置を打ち出した。これを受けアームは一時的に中国合弁への技術供与を見合わせた。ただ中核技術は英国由来のため米の規制対象にはならないと判断し、取引を再開している。

アームは日本経済新聞に対し、「地政学的な緊張と(米の)輸出管理規則は、ウー氏の解任などに関係していない」とし、貿易摩擦との関連を否定している。

一方で台湾の大手シンクタンク、資訊工業策進会産業情報研究所(MIC)の施柏栄シニアアナリストは「アームがあらゆる技術ライセンスの供与と運営を担う子会社を中国に設立し、それを制御できないというのは異常だ」と指摘する。

中国政府は革新のカギを握る半導体産業の育成を急ぐ。アームの中国合弁は業界では「中国にとって突破口になる」とみなされてきた。施氏は米中摩擦が激化するなか、合弁は「アームを二大国の板挟みの立場に追いやることになる」と話した。

(台北=鄭婷方、黎子荷、香港=陳綺●(あめかんむりに文))』