もろ刃の対中輸出規制 米、自国半導体懸念し「寸止め」

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59864700S0A600C2EA1000/

 ※「兵糧攻め」も、大変だ…。敵の「糧道」を絶つつもりが、自分の首をしめることになる…。
 しかし、「排除の流れ」は、もはや揺らぐことは無いだろう…。
 「時がどちらに味方するのか」の戦いだ…。

『米国がハイテク分野で対中圧力を強めている。制裁手段として多用する輸出規制は破壊力が大きいが、国内企業にも副作用が及ぶもろ刃の剣だ。香港問題を機に政権・議会は一段と強硬姿勢をみせるが、その「攻め方」を巡っては各省庁の思惑が複雑に交錯している。

「中国共産党のイスラム教徒に対する卑劣な攻撃に、米国の製品や技術が使われないようにする」(ロス米商務長官)。商務省は22日、中国の新疆ウイグル自治区のウイグル族弾圧に関わったとして、中国企業11社を事実上の禁輸リストに追加した。米アップルとも取引があるスマホ部品メーカーも標的にした。

中国に先端技術が流れる経路を1つずつ塞いでいる。商務省は6月末、中国が香港国家安全維持法を制定したことを受け、中国本土並みに厳しい輸出規制を香港に適用した。米当局によると、華為技術(ファーウェイ)は本土より規制が緩い香港に設けたペーパーカンパニーを通じて米国製品を入手したとされる。

実動部隊である商務省の裏側にいるのは国務省だ。フォード国務次官補は「中国共産党は人権侵害のためハイテクを使っている」と断じる。国務省と商務省は「頻繁に顔を合わせて懸念を共有」(商務省高官)し、監視カメラやAI企業への禁輸措置に動いてきた。

司法省も援護射撃する。司法省は18年末「チャイナ・イニシアチブ」と呼ぶ特別チームを発足させ、今年2月にファーウェイを追起訴した。社内で隠語を使って北朝鮮との取引を隠したり、ライバルから技術を盗んだ社員を表彰したりする企業文化を暴露した。

米国が繰り出す輸出規制は破壊力が大きい。18年に禁輸措置を課された中興通訊(ZTE)は経営に行き詰まり、習近平(シー・ジンピン)国家主席がトランプ大統領に制裁解除を直談判する事態に発展した。「政権内で強力な制裁措置として『使える』との認識が広がった」と商務省の元高官は指摘する。

米国は対中関係を完全に遮断する禁輸までは踏み込まず「寸止め」で抑える。背景には国防総省の存在がある。中国企業への厳しすぎる輸出規制で、米半導体産業が打撃を受けることを危惧しているためだ。軍需企業のロビイストを長く務めたエスパー国防長官は、ハイテク規制を強める場合「米企業への副次的な影響を注視しなければいけない」とクギを刺す。

5月のファーウェイへの制裁強化策で採用を見送られた幻の案があった。従来、ファーウェイ規制は米国製の部材比率が25%以下であれば日本などの外国企業が同社にその製品を輸出できるという抜け穴があった。これを10%以下に引き下げる案だ。「10%条項」は北朝鮮やシリアに輸出する場合に適用する極めて厳格なルールだ。

米半導体業界は、ファーウェイ向け輸出に10%条項が適用されれば「(日欧など)外国メーカーが米国の半導体技術・製品を避ける動きが加速し、米半導体メーカーの国際競争力が失われる」と米政府に猛烈なロビー活動を仕掛けた。

同業界の意向をくみ取り、待ったをかけたのが国防総省だ。10%条項の採用は幻に終わり、米半導体産業協会は「事前に検討された広範な手法に比べれば打撃は少ない」との声明を出した。国防総省は産業界の「駆け込み寺」ともいわれる。

国防総省が守ろうとする米半導体産業の競争力には陰りも見える。米インテルのボブ・スワン最高経営責任者(CEO)は23日、「他社の製造プロセスを必要としている」と述べ、ライバルの台湾積体電路製造(TSMC)との競争に劣後している状況を認めた。

省庁間の激しい綱引きの末に決まった制裁は米中以外も巻き込む。米政府は8月以降、ファーウェイなど中国5社の製品を使う企業とは契約を新たに結んだり更新したりしない。「日本企業は米中のどちら側との取引を優先するのか、十分議論しなければならない」とワシントンの通商弁護士は警告する。

(ワシントン=鳳山太成)』