〔「宮崎正弘の国際情勢解題」より〕

〔「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和2年(2020)7月30日(木曜日)
       通巻第6602号  <前日発行>〕より

ペンシルバニア、ウィスコンシン、ミシガンは接戦州
  ネバートランパーたちが共和党内をかき荒らしている

『RVAT(REPUBLICAN VOTER AGANIST TRUMP=共和党員だがトランプに投票しない運動)を組織したのはジャック・スピエルマン(元陸軍サイバーセキュリティ・エンジニア)だ。
かれは一貫して共和党支持だったが、トランプが陸軍中将ヴィンドマンを解任して以来、バイデンに投票することを決めたばかりか、ほかの共和党支持者にもおなじ投票行動をおるように呼びかけ、五月にRVAT運動を始めた。

 六月、もっと大がかりな「リンカーン・プロジェクト」が始動する。
 これはブッシュ政権の高官が中心となって、かなり広範な呼びかけが行われており、ミット・ロムニーやジェブ・ブッシュといった、トランプに個人的に反感の強い人脈が母体となっている。

 もうひとつ、元ブッシュジュニア政権を担った共和党員たちが集合し、「アルミネ43」が結成された。
さらには「ブレイブリー・プロジェクト」が発足した。これら四組織以外にもトランプ反対運動が共和党員によってなされており、いずれも共和党支持者だけれども今回はバイデンに投票しようと、共和党のPACリストを元に、共和党集票マシンの分断を図る。共和党の選対から見れば分裂主義、裏切り者と映るだろう。

 すでにコーリン・パウエルや、アーミティジらは四年前にも50名が連名でヒラリーに投票するとして露骨なトランプ当選阻止を狙ったが、こんかいも同様にバイデンに投票することを呼びかけている。
 この動きに同調する共和党有力者が微増しているという。

 かれらはブッシュ親子がそうであるように民主党と深い根では繋がる、いわゆる「ディプステーツ」であり、もし民主党政権ができても、国防長官と財務長官は共和党系で占めるという伝統的な流儀にしたがっているように推測できる。

 年初まで共和党内のトランプ支持率は90%あって磐石だった。党内の反トランプの分派は、ごく少数で資金も集まらず、吼えるだけの存在として、まったく無視された。
 
 コロナ災禍で状況が激変した。
 共和党内でトランプ反対(ネバートランパー)と言われる人々が急増するようになった。 党内でトランプ支持が78%にまで急落した。これは失業率の増加に比例した。

 とりわけペンシルバニア、ウィスコンシン、ミシガンは前回トランプが辛勝し、ここでヒラリーをひっくり返したが、2020年大統領選挙では、この三州をうしなうとトランプは極めて危ない情勢となる。

 ネバートランパーらは、この三州に集中する行動に出た。集まった資金の大半を、テレビCMに注ぎ込み、バイデン支持に乗り換えるよう共和党支持者に訴えるという想定外の政治宣伝を始めたのだ。

 ネバートランパーの組織にはウォール街の非主流派や、ニューヨークのファンド筋から10万ドル単位の資金が寄せられ、RVATは1300万ドルを集めて、勢いづいた。彼らは同時に、選挙に弱い共和党議員への攻撃も開始した。

 メイン州のスーザン・コリンズ、コロラド州のコリー・ガードナー、モンタナ州のスティーブ・ダイネス(いずれも上院議員)。トランプ政権は、現在上院が過半数ゆえに助けられているが、上院が民主党多数派にひっくり返ると、防衛外交政策に反対がなされ、政策実現が流動的となる。
 それもこれもあれも、みんな武漢ウイルスの所為だと中国への反感はますます募る。』

※ こういう辺りが、前述のエスパー演説なんかにつながっている…。

※ 当然の話しだが、米国の共和党も一枚岩では無い…。「アンチ・トランプ」は、共和党の中にもいる…。特に、上院の改選で「議席」がかかる人は、真剣に「どうすべきか」考えるだろう…。

※ しかし、「共和党員」のくせに、「民主党のバイデン氏」を支持したとなれば、後々どういうことになるのか…。当てが外れて、「トランプ氏再選」となった時には、自分の政治キャリアは、どういうことになるのか…、などなど諸般の事情を、考慮せざるを得ないだろう…。