タワーマンションの未来

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO61857430S0A720C2TCS000/

『タワーマンションの建設が東京などに限らず、地方都市でも広がっている。居住性が高く人気だが、管理や修繕に要する費用がかさむなど問題も抱えている。神戸市は7月、市の中心部での立地を認めない規制を導入した。タワーマンションの現状と未来をどうみるのか関係者に聞いた。

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■乱立は都市機能損なう 神戸市長 久元喜造氏

神戸市は7月から、三ノ宮駅周辺(22.6ヘクタール)を「都心機能高度集積地区」に指定して住宅の立地を禁止し、その外側の元町なども含む市の中心部(292ヘクタール)では住宅の容積率の上限を400%に引き下げた。タワーマンションの建設に一定の歯止めをかける狙いがある。

市内には5月時点で58棟、そのうち三宮などがある中央区に20棟のタワマンが立地している。短期的にみれば、今後もどんどんできた方が人口は増えるかもしれないが、長期的にみれば都市の持続可能性という点で問題がある。

阪神大震災から25年たち、三宮も復興したが、元に戻すのに精いっぱいで時代の変化に対応できなかった。だから、市長になって三宮の再整備構想を作った。現在、阪急のビルが建て替え中で、次はJRビルも建て替わる。市は国や民間とともに東京・新宿のバスタのようなバスターミナルが入るビルをつくる。ウオーターフロントも再整備する。都市戦略として商業業務機能を集積する。

一方、業者がタワマンを建てたいと思うのは駅の近くになる。それを認めると商業業務機能が衰退し、神戸は大阪のベッドタウンになってしまう。大阪まで鉄道で20~30分だから。私はそうではなくて、人々に神戸で買い物をして、グルメやアートシーンを楽しんでもらいたい。

まちづくりの面では狭い地域に林立すると子育て世代が一気に増えて学校や保育所が不足する。趨勢として人口は減るのだから、それらをつくると将来、遊休化する可能性がある。コミュニティーづくりの点でも問題がある。実態を調べようと高層マンションの管理組合にアンケート調査したことがあるが、あまり返ってこない。総じて地域活動への参加意欲が乏しい。

私は分譲マンションに内在する問題が将来、タワマンに端的に表れてくると思う。事業者は分譲時点では修繕積立金の水準を抑える。いずれ積立金を上げないといけないのだが、戸数が多いし、住民同士のつながりも深くないから合意形成するのが難しい。古くなると管理組合が機能不全に陥ることもあるだろう。

大規模災害が発生して建物内のエレベーターや電気、水道が止まったらどうなるか。高層階のかなりの人が取り残されかねない。タワマンはいわば、巨大な閉鎖居住空間。郊外の住宅団地ならば空き家が増えたとか、高齢世帯ばかりになったとかが行政でもわかる。高層マンションの場合、行政が居住者や管理の状況を把握するのは難しい。

それでもやろうと、国が改正したマンション管理適正化法を使って、管理状況などを任意で届けてもらう制度を今年度中に試験的に始める。修繕積立金などの情報を公開する仕組みを考えたい。

ウイズコロナの時代には高密度を重視するこれまでの発想が見直されるのではないか。住まいでいえば極めて狭いエリアで集まる。その典型が高層マンションだ。そうではなくて、自然が豊かな開かれた空間のなかで仕事をして暮らすライフスタイルに転換するかもしれないと思う。』


『■管理の「見える化」進める 東急コミュニティー社長 雑賀克英氏

グループ全体で9千件、53万戸のマンションを管理している。そのうち、タワーマンションが83件、2万7千戸ある。1976年に建てられたタワマン第1号の「与野ハウス」(さいたま市)も我々が管理している。

タワーマンションは立地が良いところが多いし、共用設備も整っている。ソフト面でも例えば常駐の警備員がいるなど普通の物件にはない魅力がある。住みやすいうえ、資産価値も高いので値崩れしづらいと評価されている。

一方、そもそもの戸数が多いし、多様な階層の方々が暮らしているのがタワマンの特徴だ。当然、管理に求めることも居住者の間で異なってくるのでそれを調整するのが大変だ。都内では支店ごとではなく、タワマン専門の部署を作ってノウハウを蓄積しながら管理にあたっている。

タワマンが多く供給されたのが2007~08年ごろ。それらがちょうど、最初の大規模修繕の時期を迎えているが、費用は普通の物件の1.5倍から2倍近くかかる。足場を組むのではなく、ゴンドラをつるして工事をするので天候の影響を受けるし、工期も長くなる。管理組合に対しては資金面も含めて事前にしっかりと計画を立てて実施することを提案している。

今やマンションは多くの居住者にとってついのすみかになっている。我々は日常の点検や維持管理のほか、防災訓練を提案したり、財政が苦しい管理組合に対しては、省エネに努めてコストを削減することなども助言している。しかし、これまでは管理組合の意欲を高めるような仕組みが十分ではなかった。

国が改正したマンション管理適正化法に基づいてできる制度は新たな一歩になるのではないか。適切に管理している物件を自治体が認定できるようになるからだ。

マンション管理業協会は個々の物件の様々なデータをもとにSランクとか、Aランクとか等級に分ける制度案をすでにつくっている。管理の状況を「見える化」するわけだ。これを自治体に示し、活用していただければと期待している。

マンションはすでに社会資本のひとつだと思う。こうした評価制度が市場に浸透すれば売買時に参考になる。高い等級の物件ならば損害保険料が安くなったり、融資の金利が低くなったりすれば、組合がさらにしっかりと管理しようという動機づけになる。

これまでにいろいろな開発に携わってきたが、大規模な案件だと新たに道路や学校などが必要になる。この点から考えれば、タワマンの建設を規制する動きが出てきたことも理解できる。もうどんどん建てればいいという時代ではないのだろう。管理会社としては、建った後に地域のコミュニティーづくりにどう貢献するのかが大事になる。

老朽化した物件の建て替えは合意形成が難しい。管理会社は中立の立場で様々な提案をするが、高齢の居住者の仮住まいなどを確保する制度がないとなかなか前に進まない。タワマンも100年はもつだろうが、その先はといわれるとゴールはまだないのではないか。』


『■居住者頼みは限界 早稲田大学教授 鎌野邦樹氏

タワーマンションが人気なのは事業者にとって収益性が高いうえ、消費者のニーズに合致しているためだ。立地が良くて住宅の質が高く、豪華な共用施設を備えている。都市部にあるのに騒がしくなく、高層階なら眺望も楽しめる。いわば「売れる」から「建てられる」のだろう。

現在は家族の形態も多様だから、都市居住のひとつの選択肢としてタワマンをただちに否定すべきではないと思う。都心部の物件は投資対象として中国や中東などの投資家にも人気がある。

一方で、共用部分も自分たちのお金で管理し、その負担は大きい。リーダー次第の話ではあるが、一般にタワマンは低層と高層の居住者間で経済格差があるなどコミュニティーを形成しづらい。修繕積立金などの値上げが必要になれば、厄介な問題になる。

日本がドイツとフランスを参考に区分所有法をつくったのは1962年。小さな細胞のような多数の専有部分からなるタワマンは「区分所有の極致」だ。ちなみに欧州ではタワマンはほとんどない。

建物としてみると100年持つだろうが、居住価値を守るためには適切に維持管理する必要がある。現在は管理組合をつくって理事会で修繕方法などを決めているが、普通の人が土日だけ集まって務まる仕事ではない。管理費などを滞納する居住者もいる。

法的には理事会方式のほかに第三者管理者方式がある。専門家を管理者にする方法だ。管理者の仕事が不十分な時は居住者が総会で選び直す。タマワンは専門の業者による管理者方式がふさわしい場合も多いのではないか。

区分所有法ができた当時は専門家などいなかったから町内会のようにみんなで決めようと理事会方式が広がった。欧米ではほとんどが管理者方式だ。ドイツのように法律に「適正管理請求権」を盛り込むことも考えられる。居住者が管理者に建物の品質を維持するように求める権利だ。

100年は持つとしてもその後はどうするのか。タワマンを建て替えるのは容易ではない。となると、区分所有権を解消して土地と建物を売り、その売買代金を居住者の間で分配することになる。

所有者全員の合意が必要だが、地震で被災した場合や耐震基準を満たさない物件は5分の4の合意でも可能だ。今回の法改正で外壁が剥落している物件も加わった。私は最終的には理由にかかわらず、区分所有権を解消できるようにすべきだと思う。

神戸市のように地域の事情に応じてタマワンを規制することは評価したい。都市計画上の問題や学校の整備など様々な理由があるのだろう。これは推測だが、将来、問題が予想されるタワマンをどんどんつくられては困ると市は考えているのかもしれない。

人口が減るなかで供給過剰になればタマワンでも賃貸化が進み、空き家も増えるだろう。国も管理不全で負の財産になった場合の対策をそろそろ考える必要がある。韓国や中国でも大規模なタワマン団地が増えているから、いずれアジア全体で大問題になるのではないか。』
『■出口戦略、今から議論を

タワーマンションに法的な定義があるわけではないが、一般に20階建て以上の物件を指す。1997年の建築基準法改正を機に一気に広がった。

「50階建ての物件が著しく老朽化したらどう再生するのか」と問われて現在、答えられる人は多分いない。マンションを再生する場合、より大きな物件に建て替えて余剰分を売り、建設費の一部に充てるのが一般的だが、タワマンでは考えづらい。

鎌野教授が指摘するように区分所有権を解消して土地と建物を売る道はあるが、現行法ではその物件を解体することが前提になっている。それを壊さずに専門の事業者が手を入れて賃貸物件に変え、元の居住者が暮らし続けることが可能になれば、住民の合意を得やすくなるかもしれない。タワマンの出口戦略をそろそろ考えるべきだろう。

(編集委員 谷隆徳)』

 ※「100年は持つ」と言っているんで、「高速道路」みたいなインフラとは、またちょっと違っているんだろう…。
 しかし、それも「適切にメンテナンス・補修すること」が、前提となっているんだろう…。
 
 小杉のタワマンとは、異なって、「災害対策・治水対策」としての役割の機能…の話しが、中心では無いようだ…。
 所有権の対象、私有財産権の対象としての「各人の財産」を、どう「資産としての価値」を維持していけばいいのか、という話しが中心のようだ…。そこでは、個々の「財産保有者」の間(あいだ)で、どう「全体の利益」を図るべく、意見集約していくのか、という話しが中心のようだ…。

 しかし、「財産」と言い、「資産」と言っても、「社会」「社会構造」から離れた独立のものでは、あり得ない…。

 そういう観点からは、「人口減少社会におけるマンションというもののあり方」や、ひいては、それを包摂している「「街(まち)」のグランド・デザインのあり方」…、なんて問題・課題が、見え隠れしている感じだな…。