漂流する習近平国賓訪日と東京五輪の複雑な関係

漂流する習近平国賓訪日と東京五輪の複雑な関係
編集委員 中沢克二
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61765490R20C20A7I10000/

 ※ こりゃ相当に「踏み込んだ」情報だぞ…。


 あわや、「天皇陛下(現上皇様)会見の政治利用」の二の舞だった…。あわや…、の話しだった…。「コロナ」が、かえって幸いした…形だ…。


 外交というのは、こういうものだ…。「虚々実々の駆け引き」、「狐と狸の化かし合い」「舌の数の多い方が、勝利する」「騙された方が、ウマシカ」だ…。
 しかし、まあ、「騙されたフリ」も、時には有効だ…。
 「騙されたフリ」をして、「怒ってみせている」ということも、あるからな…。
 「怒ってみせて」、返す刀で、「親中派」の勢力を削って行く…、という手もアリだからな…。

 しかし、まあ、国家戦略の舵取りを担う「職務」の人材は、決して「お人好し」であってはならない…。
 外見は、「お人好し」に見えていて、その実「腹黒く」「ずる賢く」立ち回れる人材じゃないとな…。
 そういう意味では、一般社会における「良き隣人」像と一国の国家戦略を担って活動する人材像は、大きく異なっている…。

 残念ながら、そういう点では、日本社会は、ある意味、弱点を抱えている…。
 昔(むかし)も今も、「武士気質(かたぎ)」を良しとする風潮・価値観がある、からな…。
 追い詰められ、圧迫されると「最後には、刀を振り回すサムライ」では、国民みんなが困窮する…。

 そこを、どう修正・改善していくのか…。まあ、日本国の「永遠の課題」かもな…。

『「米国、英国、オーストラリア、インド……。あちこちとケンカしている中国はこの夏、再び『センカク』(沖縄県尖閣諸島)に大量の漁船を送って、日本とまでもトラブルを起こすのか」「延期されたシー・ジンピン(習近平)訪日は本当に実現できるのか」。最近、複数のアジア有力国の外交官から問われた。

過去の日中間の動きも熟知した鋭い質問である。抜き差しならない米中対立のなかで米国の同盟国、日本と中国の関係がどちらに傾くのか。それは我々が考える以上にアジア各国の注目点なのだ。

とはいえ、その答えの大半は中国だけが知っている。なぜなら国際的な約束を反故(ほご)にした香港国家安全維持法の突然の決定・施行といった強硬姿勢は、竹のカーテンで見えない中国の内政に起因しているのだから。

■コロナ禍での不信、拍車かけた香港問題

確かに日中関係を巡るコントロールは極めて難しい局面に来ている。自民党は、中国が施行した香港国家安全法を非難し、国家主席である習近平の国賓来日の中止を要請せざるを得ない、とする決議を政府側に提出した。』
『日本経済新聞社の世論調査でも習の国賓待遇での来日について「中止すべきだ」との回答は62%に上った。中国との関係を重視してきた公明党の支持層でさえ5割を超えているのは驚きだ。

新型コロナウイルス禍で今夏の東京五輪は延期された。感染症はまず中国の湖北省武漢でまん延し、その後、日本を含む世界に広がった。「中国が隠蔽せず早期に対処していれば、東京五輪はまさに今月、予定通り開催できたかもしれない」。かなりの日本国民がこう感じているのは間違いない。首相の安倍晋三と習近平が長い間、電話協議さえできない裏には、こうした国民感情もある。』
『そんな不信感に「一国二制度」を自ら壊すような香港国家安全法が拍車をかけた。決定・施行の経緯には対日外交の絡みでも疑義がある。習訪日が当初予定通りだったなら、日本が知らないうちに香港国家安全法の宣伝に利用される恐れさえあったのだ。

コロナ禍がなければ習訪日は4月上旬のはずだった。直前の3月には中国が国会に当たる全国人民代表大会(全人代)を開催。本来、中国指導部はこの全人代で香港国家安全法の制定方針を決める青写真を描いていたに違いない。その後の全人代常務委員会で法案を通し、7月1日までに施行すればよい。

とすれば3月全人代での方針決定の直後に習が訪日したはずだ。「謀られたのか……(※ 「謀られた」に、決まっている…。)」。何も知らされていない日本政府には衝撃が走るが、後の祭り。国賓として招待しているのは日本側なのだから、予定通り実行するしかない。』
『日本は3カ月後に迫る平和の祭典、東京五輪のホスト役として笑顔で各国の人々を迎える責任がある。そう考えると今回のように香港国家安全法の再考を中国に強く求める日米欧外相らによる共同声明を主導できたかも怪しい。習は東京で安倍とともに両国の「第5の文書」に署名したうえで、香港国家安全法の制定は中国の内政であり、外国勢力の干渉は許さないと訴えたはずだ。

香港への措置は中国の内政上の大きな成果とされる。「自由主義世界の一角を崩したことで『中国式統治システム』の優位性を示し、それをさらに世界に広げる足場を固めた――」。共産党内部ではそう評価される。安倍は習を予定通り招くことで結果的に片棒を担いだと国際社会から非難されかねなかった。米大統領選挙を控えてピリピリするトランプ政権からの批判も避けられなかっただろう。

習訪日、東京五輪は延期された。全人代だけが2カ月半遅れで開かれ、香港国家安全法の強行という危うい道が切り開かれた。米英の対抗措置などで世界はもめている。いずれにせよ中国の内政に国際政治が振り回されている構図は同じだ。日本もその渦中にある。

■政治利用される尖閣問題

目下の問題は沖縄県の尖閣諸島である。周辺の接続水域では中国海警局の公船が90日以上も連続で確認されている。国有化に反発した中国で激烈な反日デモが起きた2012年9月以降、最長の連続日数だ。

最大の焦点は、冒頭で紹介したようにこの夏、尖閣諸島の周辺に大量の中国漁船が現れて領海侵入にまで至るかどうか。中国が尖閣諸島周辺の東シナ海で設定する休漁の期間は8月中旬に明ける。

最近、目立った例は4年前だ。尖閣周辺の接続水域に230隻もの中国漁船が集結。中国海警局の公船と中国漁船が軌を一にして尖閣諸島の領海に侵入した。同時侵入は歴史的にも初めての事態だった。意図的に緊張を作り出す異常な行為は、中国当局の明確な指示がなければできない集団行動だ。

19年夏には一転する。多くの漁船が出港する中国福建省で漁業当局が漁民に対して尖閣周辺海域へ近づかないよう指示を出したのだ。次の年の習訪日が早々に固まっており、関係悪化を避ける狙いがあった。

中国には、尖閣諸島を国際政治の道具として利用してきた実績がある。1978年4月、尖閣諸島はいきなり緊迫した。海上保安庁の記録によると、魚釣島の北西海域に100隻の中国漁船が到着。五星紅旗を掲げ、機銃も装備した十数隻の漁船が領有権を主張しながら日本領海に侵入した。』
『日本側は巡視船10隻と航空機4機で対応し、1週間後、ようやく全漁船を領海外に退去させた。それでも中国漁船は領海線付近での操業をやめなかった。緊迫が約1カ月も続く。当時、日中間では平和友好条約の締結に向けて厳しい折衝が続いていた。福田赳夫内閣は中国に抗議したが、中国側はこう繰り返す。「偶然、発生した事件だ」

この頃、中国では文化大革命などで失脚した鄧小平が復活し、最高指導者の地位を固めつつある政治的に微妙な時期だった。中国側は78年夏になると、今後、同様の事件は起きない、という趣旨の回答をしてくる。同年8月、双方は日中平和友好条約に署名した。』
『■東京五輪の行方もカギ

今、中国は太平洋でも動いている。中国の海洋調査船が9~18日にかけて沖ノ鳥島近くの日本の排他的経済水域(EEZ)内で海洋調査とみられる活動をしている。日本政府は外交ルートを通じて抗議したが、中国外務省は「岩礁であって島ではなく、EEZや大陸棚は付属しない。日本側の許可は必要ない」と主張している。

中国の海洋での活発な動きは南シナ海情勢とも絡んでいる。米トランプ政権は先に南シナ海の海洋権益に関する中国の立場を「完全に違法」と否定した。4年前、中国の主張を退けたオランダ・ハーグの仲裁裁判所の判決に米国の立場を一致させたのは新たな動きだ。

英国が最新鋭空母「クイーン・エリザベス」中心の空母打撃群を来年初めから極東に派遣する計画も報じられている。南シナ海で「航行の自由」作戦を展開する米空母との連携もありうる。中国への軍事的圧力は増す。

米中対立が風雲急を告げるなか中国は考えざるをえない。既に日本企業の一部には生産拠点を中国から移す動きがある。経済的に重要な日本をさらに米側に追いやり、習近平訪日まで潰しかねない強硬な対日圧力に意味があるのかどうか。

既に年内訪日は困難になった。今後はどうだろう。「注目点はまず来夏の東京五輪の行方である」。日本の政界からはこうした声が聞かれる。例え1年遅れでも来夏までに世界でコロナ禍がほぼ克服され、東京五輪を開けるメドが立つなら、心機一転、訪日を再調整する余地が生まれる。

ただ、東京五輪と同じ21年夏には中国共産党創設100年の記念行事、22年秋には今後の中国の行方を決める最高指導部人事がある共産党大会も予定されている。日本側の政局の動きもあり、合間を縫うのはなかなか至難の業だ。コロナ禍、香港問題、米中対立、東京五輪……。習近平の国賓訪日問題はいまだ漂流中である。(敬称略)』