ドッド・フランク法成立10年 未完の改革

ドッド・フランク法成立10年 未完の改革(NY特急便)
米州総局 宮本岳則
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61807910S0A720C2000000/

 ※「資本主義」は、「資本自由主義」「儲け自由主義」だから、いつでも「リターン」を追求する…。
 しかし、「ハイ・リターン」は、「ハイ・リスク」と裏腹の関係にある…。
 だから、資本主義においては、いかに「リターン」を追求した結果、「リスク」が顕在化して、経済全体が「崩壊」の危機に瀕することを抑制するのか、が「永遠の課題」となる…。
 グラス・スティーガル法における「銀行と証券」の分離、ボルカー・ルールにおける「ハイリスク商品の禁止・抑制」なんかは、その試みだ…。
 しかし、本質的に「儲け第一主義」なものだから、いかに「法制化」「制度化」しても、その尻から「骨抜き化、例外化、抜け道化」がなされる…。それがまた、次の「危機」の萌芽となる…。
 そのくり返しだ…。
 グラス・スティーガル法、ボルカー・ルールくらいは、「常識」の部類に属すると思うので、知っておいた方がいい…。

『米金融市場は楽観論に包まれている。21日は新型コロナウイルスの新規感染者が過去最高水準で推移するなか、ダウ工業株30種平均が続伸した。マネーはハイテク株と景気敏感株の間を循環しており、株式市場から流出する気配はない。投資家が強気姿勢を崩さない理由の1つに金融システムの安定がある。10年前のこの日に成立した「ドッド・フランク法(金融規制改革法)」の功績は大きい。

「定期的な審査を通じて、銀行が十分な資本の積み増しを迫られたため、コロナ下でも危機は起きなかった」。米民主党の重鎮、バーニー・フランク元下院議員は2008年のリーマン危機以降に導入された金融規制の効果について、こう強調した。リベラル派のフランク氏は下院金融委員会トップとして、ドッド上院議員と「ウォール街改革・消費者保護法(通称ドッド・フランク法)」をまとめあげ、10年7月21日に法案が成立した。

金融規制の効果は確かに大きかった。今年3月、新型コロナの感染拡大で経済活動が一時停止し、米企業は突然の資金不足に見舞われた。米銀は十分な資本を備えており、9兆円を超える与信枠からの引き出しや、つなぎ融資要請に対応することができた。多くの企業が資金繰り危機を乗り越え、足元では社債や株式による調達が可能になった。08年のリーマン・ショックでは銀行自身のバランスシートが毀損したため、企業を支援する余裕がなく危機が拡大した。

ドッド・フランク法にとって「試練」は17年のトランプ政権誕生だった。トランプ大統領は「貸し出しコストの上昇につながっている」などと批判を繰り返し、撤廃を宣言していた。金融持ち株会社の監督などを担う米連邦準備理事会(FRB)では、規制強化を進めたタルーロ担当理事が辞任し、元財務次官のクオールズ氏が就任した。規制緩和に慎重だったフィッシャー副議長も去った。一連の人事交代は金融界の期待を高め、ロビー活動の活発化につながった。

ところがトランプ政権下の約3年間で実現した見直しは小幅なものにとどまった。例えば高リスク取引を制限する「ボルカー・ルール」。ドッド・フランク法の中核である同ルールを巡っては、FRBが売買規模の小さい中小金融機関の適用免除を決めたが、大手銀行には引き続き厳しい規制を課している。「根幹部分は変わっていない」。フランク氏もこう評価する。トランプ氏や銀行の攻勢に直面しても、「一定の歯止めが必要」との認識が議会や当局者の間で揺らがなかったことを意味する。

金融市場を巡る改革はまだ終わっていない。FRBのクオールズ氏は14日、金融安定理事会(FSB)議長として主要国・地域の中銀や監督当局に宛てた書簡で、規制が直接及ばないノンバンクを通じた融資の問題点を指摘した。新型コロナ危機によってレバレッジの大きさや不安定な値動きの連鎖など脆弱性が浮き彫りになり、中銀は介入する以外に選択肢がなかったという。ノンバンクは金融危機以降、リスクをとりづらくなった銀行に代わって、融資を拡大していた経緯がある。

イエレン前FRB議長は6月末、ノンバンクの監督強化を念頭に「新ドッド・フランク法」が必要になるとの認識を示した。いわゆるシャドーバンク(影の銀行)規制は、金融危機当時からの課題であり、コロナ危機は当局者への警鐘となった。この「古くて新しい」問題は11月の大統領選を経て、次の政権に引き継がれることになる。

(ニューヨーク=宮本岳則)』

ドッド=フランク・ウォール街改革・消費者保護法
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%83%E3%83%89%EF%BC%9D%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%82%A6%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%AB%E8%A1%97%E6%94%B9%E9%9D%A9%E3%83%BB%E6%B6%88%E8%B2%BB%E8%80%85%E4%BF%9D%E8%AD%B7%E6%B3%95#:~:text=%E6%B3%95%E6%A1%88%E3%81%AB%E7%BD%B2%E5%90%8D%E3%80%82-,%E3%83%89%E3%83%83%E3%83%89%EF%BC%9D%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%82%A6%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%AB%E8%A1%97%E6%94%B9%E9%9D%A9%E3%83%BB%E6%B6%88%E8%B2%BB%E8%80%85%E4%BF%9D%E8%AD%B7%E6%B3%95,Act%EF%BC%89%EF%BC%88Pub.L.

ボルカールール
https://en.wikipedia.org/wiki/Volcker_Rule

グラス・スティーガル法
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%82%AC%E3%83%AB%E6%B3%95