〔日経、米国・中南米関連〕

[FT]バイデン氏、重要州テキサスで支持拡大

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61719290Q0A720C2000000/

『米南部テキサス州のメキシコ湾沿いにある選挙区で今年11月の下院選に現職の共和党議員に挑む民主党のアフリカ系女性候補エイドリアン・ベル氏は最近、保守派の有権者から思いがけず支持を伝えられた。

「83歳の白人男性から電話がかかってきて、こう言われた。『40年以上も共和党に投票してきたが、今度はあなたに票を入れよう。現政権の政策が理由だ』」
ベル氏は、新型コロナウイルスなどへの対応で同じようにトランプ大統領に幻滅している共和党支持者らも、自分を勝利に押し上げる力になってくれると信じている。ベル氏は、大統領選でバイデン前副大統領が民主党候補として1976年のカーター元大統領以来となるテキサスでの勝利を収めることを願う多くの党員の一人でもある。

テキサスでの結果は米国の政治で象徴的な意味を持つ。大統領選で同州に割り当てられる選挙人は38人で、民主党の地盤であるカリフォルニア州に次ぐ数だ。重要州であるテキサスを制することができれば、伝統的なスイングステート(支持が揺れ動く州)の大半を勝ち取る必要性が薄れる。

民主党員は、人口構成の変化でテキサスが自党寄りに傾くのを期待して見守ってきた。その変化が2020年の大統領選に影響を及ぼすほどのペースであるとはほとんど思われていなかったが、トランプ氏が方程式を変えたかもしれない。

■5ポイント差でリード

前回16年の大統領選で、トランプ氏はヒラリー・クリントン元国務長官を得票率で9ポイント上回り、テキサス州を制した。同州での共和党大統領候補の勝利としては、1996年にドール元上院議員がビル・クリントン元大統領を破って以降、最小差での勝利だった。投票まで4カ月となった今、トランプ氏はバイデン氏と接戦状態だ。

ダラス・モーニング・ニューズ紙とテキサス大学タイラー校が同州で行なった先週の世論調査では、バイデン氏が5ポイント差でリードしている。4月時点では互角だった。バイデン氏は無党派の間で10ポイント、共和党支持者の間でも4ポイント、それぞれ支持率が上昇した。

バイデン氏は先週、テキサスで初めてテレビ広告を流した。だが陣営の関係筋によると、人口2900万人の同州を制するのに必要な費用を投じるのに見合う勝算があるのか、バイデン氏はまだ判断していないという。

バイデン氏に勝機は十分あるとみるテキサス州選出のベラ下院議員(民主党)は、陣営は優先度を見極めなければならないと話す。「資源配分の面が大きい。資金がどれだけあり、他に投じなければならないのはどこなのか」

ベラ氏は、テキサス州の都市近郊で民主党支持が広がっており、情勢はバイデン氏に有利とみている。テキサスは米国のコロナ感染の中心地の一つになっており、共和党員もトランプ氏のコロナ対応に怒っているとベラ氏は強調する。

同州の政治ニュースレター「クオーラム・リポート」のスコット・ブラドック編集長は、トランプ氏がバイデン氏の勝算を高めていると指摘する。「ハリケーンがメキシコ湾岸の全てをひっくり返してしまうように、コロナの拡大が全ての人の生活を変えている。大統領の仕事ぶりは大きな支持を得ていない」

バイデン氏に十分な勝機があるもう一つの理由として、共和党を支持する都市郊外の女性有権者が「トランプ氏に幻滅しつつある」とブラドック氏は指摘する。だが、それでもバイデン氏を十分に押し上げるには至っていないという。

だが、州都オースティンで活動するあるロビイストは、トランプ氏はテキサスの農村部で「サダム・フセイン(元イラク大統領)級の人気」があるが、それ以外の地域では危うい変化に直面していると指摘する。「テキサスは白人有権者が共和党を見限るまではレッドステート(共和党が強い州)のままだろうが、郊外の白人女性が共和党に見切りをつけ始めている」

■女性有権者がカギ握る

テキサス大学のシェリ・グリーンバーグ教授(政治学)も、18年の中間選挙で多数の民主党女性候補を下院に送り込む原動力となった女性有権者がカギを握るとみている。「バイデン氏とトランプ氏がデッドヒートを繰り広げている事実は非常に驚くべきことだ」と同教授は言う。

銃による暴力に怒りを感じていた共和党支持の女性たちが今、トランプ氏のコロナ対応に不満を募らせていると同教授は指摘する。トランプ氏の移民に対する姿勢も一部の女性有権者の離反を招いたという。「母と子が引き離される国境での光景が本当に響いた」

グリーンバーグ教授はテキサスは一段と接戦になっているとする一方、移民の流入やヒスパニック(中南米系)の人口増加、州外からの移転による人口構成の変化はバイデン氏を十分に押し上げるには至っていないとみている。「長々と話しもらっても構わないが、人口統計がそのまま票になるわけではない」

それでも民主党員を心強くしているのが、18年の上院選でテキサス州エルパソ出身のベト・オルーク前下院議員が共和党現職のテッド・クルーズ氏をあと1歩のところまで追い詰めたことだ。オルーク氏と同氏が投票率向上を目指して立ち上げた組織「パワード・バイ・ピープル」が、バイデン氏に協力している。

バイデン氏支持者の一部は、共和党優勢のアリゾナ州でヒスパニック系有権者からの支持に期待し、ウィスコンシン州を無視した16年のクリントン氏の間違いを繰り返さないよう、スイングステートでの選挙運動に集中するよう求めている。

だがオルーク氏は、テキサスで勝利を収めれば米国の政治が大きく変わることになるだけでなく、トランプ氏が大統領選で敗北した時に異議を申し立てることもはるかに難しくなると語る。一部の民主党員は、トランプ氏が負けた場合、そうなる恐れがあるとみている。

「我々がテキサスで勝てば、その影響は大きい」とオルーク氏は言う。

By Demetri Sevastopulo

(2020年7月20日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/)』