〔日経、中国関連〕

習氏の来日「中止すべきだ」62% 世論全体が慎重に
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61703360Z10C20A7PE8000/
『日本経済新聞社の世論調査で中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席の国賓待遇での来日について「中止すべきだ」との回答は62%だった。「実現すべきだ」の28%を上回った。

「中止すべきだ」と答えた人を政党支持別に分析すると、歴史的に中国との関係を重視する公明党の支持層でも5割を超えた。立憲民主党と国民民主党の支持層では7割超だった。

世代別でみると60歳以上の68%が「中止すべきだ」を選んだ。40~50歳代は58%、18~39歳は59%だった。支持政党や世代にかかわらず世論全体が慎重姿勢に傾斜している。

安倍晋三首相に期待する政策に「景気回復」を挙げた層に絞って分析をしても全体と同じ62%が「中止すべきだ」と答え、「実現すべきだ」は31%だった。

習氏の国賓来日は2019年の日中首脳会談で合意した。当初予定していた20年春の来日は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて延期した。

自民党の外交部会と外交調査会は8日に「国賓来日の中止を要請せざるをえない」との決議を政府に提出した。政府は習氏の来日について「中国と意思疎通は続けるが、具体的な日程調整をする段階にはない」と説明する。

自民党内にはかねて習氏の国賓来日に慎重論があった。中国での邦人拘束問題や沖縄県・尖閣諸島周辺での領海侵入に不満が募る。

中国は6月には日本を含む国際社会の反対を押し切って香港の統制を強める「香港国家安全維持法」を施行した。米中間の対立が一段と深まり、日本が習氏を国賓待遇で受け入れる環境は遠のいた。』

国境衝突でモディ氏が中国を許せない理由
馬場燃
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61533860V10C20A7000000/
『インドが米国、日本、ロシア、オーストラリア、中国などと展開してきた「全方位外交」に亀裂が入りつつある。モディ首相は6月半ばに中国軍との国境係争地域での衝突によって20人の死者を出したことに伴い、経済制裁を科すなど中国と明確な距離を置き始めた。インドは中国からの輸入、技術、投資に頼らない自立した経済圏を目指すともしているが、新型コロナウイルスの感染拡大に苦しむなかでのサプライチェーン(供給網)や生産体制の見直しは苦難の道を歩むことになる。

「インドの敵はあなた方の熱意と怒りを思い知った。インド軍はどこの国よりも優れている。拡張政策をとる時代は終わった」。モディ氏は7月3日、印中両軍の衝突で死者を出した係争地域のラダック地方を電撃訪問した。亡くなった兵士に黙とうをささげるとともに現地の軍隊の士気を鼓舞した。

■中国の動画アプリを禁止

「敵」は名指しこそしていないが明らかに中国と断定できる。モディ氏は演説のさなかにこぶしを何度も高く振りあげ、全身から怒りをにじませた。モディ氏は3月ごろにコロナの感染が拡大し始めて以来、国民向けに演説する場面ではマスクをつけながら総じておとなしかった。しかし今回の身ぶりを交えて激高する様子には既視感が漂った。

そのスタイルはパキスタンをなじる時と重なるのだ。インドとパキスタンは過去に戦火を3度交え、いまも双方が領有権を主張するカシミール地方で小競り合いを繰り返す。2019年2月には両国が空爆しあう事態に発展した。モディ氏はパキスタンをテロリスト組織とみなしており、その当時は素早い軍事行動で国民の支持をとりつけた。

モディ氏は14年の首相就任後、米国などの主要国だけでなく、近隣国とも等距離外交に力を入れてきた。唯一の例外が1947年に英国から分離独立して以降、衝突してきたパキスタンだった。インドは対話を拒み、貿易も停止している。現在のインドは中国をパキスタンと同じ一派に区分したかのようにみえる。

インド政府は6月末に中国企業が提供する動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」など59のアプリの使用を禁止することを発表した。中国の通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)や中興通訊(ZTE)、自動車大手の長城汽車などを対象に製品の使用禁止や契約の見直しにも動いた。自動車部品などの中国製品の関税を引き上げ、インド国内で生産できる品目を優遇する案も浮上し、中国の企業や製品をインド市場から強硬に締め出そうとしている。

印中はヒマラヤ山脈などで約3000キロメートルの長さの国境が画定しておらず、これまでも衝突の火種になってきた。インドが20人の死者を出したのはヒマラヤ山脈の標高4000キロメートルの山奥だ。真相は明らかになっていないが、双方が相手の過失を主張している。公式の発表はないが、中国側も死傷者を出しているとみられる。それにもかかわらず中国は事を荒立てずに事態を静観する。インドだけが一方的に過熱しているのはなぜだろうか。2つの要因が考えられそうだ。

「モディ氏の信頼が完全に裏切られて中国への憎しみに変わった」。インド経済研究所の菅谷弘理事はこう指摘する。

モディ氏は18年に中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席と武漢で非公式会談し、国境の領土問題を棚上げすることで基本合意した。19年には習氏をインド南部の観光地に招き、遺跡や伝統芸能を紹介して回った。その際にも領土問題について「力で現状を変えることはない。紛争に持ちこまない」ことで認識が一致していた。モディ氏からみれば中国は今回、国境に軍事拠点を設けて武力をあっさりと持ちこんできたように映る。

■「インドに自立した経済圏を」

インドは中国が南アジア地域にも広域経済圏構想「一帯一路」を広げることを警戒していたが、アジアの大国同士として経済交流を図る大人の道を選んだ。それなのに合意が破棄されたことがモディ氏にとって許せなかったとの見立てだ。インドは米国やロシアにすり寄る動きも見せる。

もう一つは衝突のタイミングだろう。インドでは貧困層を中心に新型コロナの感染が爆発的に広がっており、感染者は累計100万人を超えた。6月はインド政府が内政に苦しみ、景気対策をどう打ちだすかに頭を悩ませていた時期だ。インドにとって軍事衝突は傷口に塩をすり込まれた思いに違いない。

モディ氏はコロナ感染拡大と中国との衝突を機に「インドに自立した経済圏を作る」と口癖のように話し始めている。背景にはコロナで中国からの輸入や国内の物流が止まったことへの危機感に加え、中国製品を排除する意図がある。ただインドは通信や半導体で中国製品に7~8割依存し、自前でのモノ作りが進まない。中国製はインド製よりも価格や品質に優れるために消費者が受け入れてきた。「自立した経済圏」の定義はまだ明確ではない。いわゆる地場産業の振興策「メーク・イン・インディア」は看板倒れに終わったが、日本企業などの外資勢はインド政府の今後の産業政策を注視している。

首都ニューデリーで7万人のフォロワーを抱えていた20代のティックトック利用者はこう語る。「使用禁止は驚き怒りを覚えた。他のアプリでは動画を投稿できない。インドは突然(何かを)抑え込むのではなく、少しずつ中国の影響力を減らしていかなくてはならない」』