ロシア、ワクチン研究にサイバー攻撃か 米英カナダが非難

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61623530W0A710C2000000/

『【ロンドン=中島裕介、モスクワ=小川知世】英政府は16日、ロシアのハッカー集団が新型コロナウイルスのワクチンを開発する研究機関にサイバー攻撃をしかけていると発表した。英国立サイバーセキュリティーセンター(NCSC)は、このハッカー集団がロシア政府の情報機関の関係者である可能性が極めて高いと認定した。ワクチンや治療法に関わる情報を盗み出すのが目的だったとみられる。

同日、米国家安全保障局(NSA)やカナダの当局と連名でロシアのハッカー集団による攻撃を非難する声明を出した。実際にサイバー攻撃を受けた組織の名前や被害の有無は明らかにしていない。ラーブ英外相は「ロシアの情報機関が新型コロナと闘うために活動している人を標的にすることは全く容認できない」と強く非難した。

今回のサイバー攻撃は「APT29」と呼ばれるグループの一員によるもので、NCSCはAPT29が95%以上の確率でロシア政府の情報機関の一部であるとみている。これまでも英米カナダでの新型コロナのワクチン開発に携わる研究機関などへのAPT29によるサイバー攻撃が確認されていた。主にマルウェア(悪意のあるプログラム)を相手に送りつけて、感染した端末からデータを引き出す手法を繰り返していたもようだ。攻撃を受けた各国のサイバー防衛当局は連携し、防衛手段を講じる。

これに加えて英政府は同日、ロシアのハッカーが不当に入手した政府の内部文書を通じて、2019年末の英国の総選挙に干渉したとも発表した。ただ、こちらはロシア政府との関係は明らかになっていない。

内部文書は米英自由貿易協定(FTA)交渉に関わる文書で、英国の公的医療制度の参入障壁の緩和の可能性が示唆されているもの。ジョンソン英政権には不利になる内容で、選挙運動中に最大野党・労働党がこの文書を材料に与党・保守党を批判した経緯がある。

英政府はロシアのハッカーがこの文書を不当に入手してSNS(交流サイト)などで広く宣伝したと批判している。ロシア側からは選挙干渉について「英国の指導部は反ロシアのわなに陥り、英ロ関係と自らのイメージを損ない続けている」(下院のスルツキー外交委員長)との反論が出ている。

タス通信によると、ロシアのペスコフ大統領報道官は16日、サイバー攻撃への関与を否定し、「このような非難は受け入れられない。選挙干渉に関する根拠のない非難についても同様だ」と反論した。』