米中冷戦でビジネス激変 日本企業に3つの備え急務

米中冷戦でビジネス激変 日本企業に3つの備え急務
国分俊史・多摩大大学院教授(ルール形成戦略研究所所長)に聞く(1)
https://bizgate.nikkei.co.jp/article/DGXMZO6127799008072020000000/?n_cid=TPRN0002

『長引く新型コロナウイルスとの戦いに世界が苦闘している中、米中の冷戦が激化している。中国は医療物資を大量に提供する「マスク外交」を展開する一方、米国は華為技術(ファーウェイ)排除拡大などの相次ぐ強硬策で押さえ込みにかかる。米中冷戦は20年続くかもしれない。国際的なビジネスルールが変わろうとしている中、外資系企業の戦略設計や欧米の経済安全保障政策に精通する国分俊史・多摩大大学院教授(同大ルール形成戦略研究所所長)は「日本企業は経済安保の視点を織り込んだ経営改革を急ぐべきだ」と警鐘を鳴らす。

〔エコノミック・ステイトクラフトはオバマ政権でも構想〕

 ――米中の対立が深刻度を増しています。昨年の貿易戦争から、中国に対し米国が強引に経済制裁を発動しているようにもみえます。個性的なトランプ大統領のキャラクターが影響しているのでしょうか。

 「オバマ前政権時代から、エコノミック・ステイトクラフト(ES、安全保障政策と経済政策を一体化し他国への影響力を発揮する手法)は提言されていました。はっきり中国との対決姿勢を示したのは2018年10月のペンス副大統領の演説です。即興的、直感的なものではなく、トランプ政権内の各省庁で準備を重ねてきた結果です」

 「他方、中国は自国の経済力を駆使したES戦略を進めてきていました。アジアインフラ投資銀行(AIIB)や一帯一路構想などでは、港湾などのインフラ整備のみならず、中国の人工衛星網や海運ネットワーク利用を前提とするケースも出ています。非軍事分野の『限定戦』という考えを最初に構想したのは、実は20世紀末の中国でした」

 ――大国間の政治的思惑でグローバル経済の合理的な自由貿易が左右されることには、強い違和感を覚えます。

 「自由貿易の促進には安定した国際協調関係が欠かせませんが、中国が既存秩序と自由競争のルールに挑戦しているとの懸念が広がっているのです。当面は不合理な面があっても経済安保を優先すべきとの認識が、濃淡の差はあっても欧米やインドに共有化されつつあります。いち早くファーウェイ問題の情報を提供したのは、貿易面で対中依存度が高いオーストラリアでした」

 「中国が進めるシャドーラボは、先進諸国の開発者に中国で同じ研究をさせ、成果をそのまま中国と共有する手法です。巨額の研究資金に応じた米国でのケースもあります。しかし知的財産を重視する立場からは、こうした形で先端技術をキャッチアップするやり方が『自由競争』だとは受け入れ難いでしょう」

〔日本企業の国際競争力そがれる可能性〕

 「以前の米ソ冷戦時代は『封じ込め』政策が機能しました。しかしグローバル経済にしっかり組み込まれている中国は閉じ込め切れません。中国に対してはこれまであまりにも寛容であったことから、米国は貿易管理の抜本的強化や禁輸対象リスト(エンティティーリスト)など経済安全保障政策という『楯』を持って、中国と向き合い始めたと捉えることが適切です」

 「昨年議論を交わした米政府の担当者は『米中冷戦は20年かかる』という認識でした。日本の経営トップは、こうした国際情勢を前提として、輸出管理の対象技術の拡大や米国でディファクト化しつつあるサイバーセキュリティ技術を用いた情報システムへの移行を急がなければ、企業の競争力がそがれる恐れもあります」

〔対米外国投資委員会の「ホワイト国」から日本は除外〕

国分俊史・多摩大大学院教授 ルール形成戦略の第一人者。IT企業の経営企画、米国系戦略ファーム、会計ファームバイスプレジデントなど歴任し。16年から多摩大ルール形成戦略研究所所長、今年6月から自民党の「新国際秩序創造戦略本部」アドバイザー。著書に「エコノミック・ステイトクラフト 経済安全保障の戦い」(日本経済新聞出版)
 ――大手企業でも安全保障問題に関心の薄いトップは少なくありません。

 「今年1月、対米外国投資委員会(CFIUS)の届け出を免除する『ホワイト国』に選ばれたのはオーストラリア、カナダ、英国で、日本は除外されました。米国の重要技術に投資する場合は、審査に対応せざるを得ません。安全保障の観点から、技術流出の疑念を拭えない日本企業は国際的な技術開発競争に参画できない可能性が出ています」

 「8月13日からは、ファーウェイなど中国系IT企業5社の関連機器やサービスを実質的に利用している企業は米政府機関のサプライチェーンに入ることが禁止されます。3次サプライヤーまでの使用状況がチェックされるため、米国政府と取引している米国企業とビジネスしている日本企業は、日本国内でも中国系5社のサービス利用はできなくなります」

 「米政府には中国企業が通信機器にバックドア(裏口)を仕掛け、知的財産の情報を抜き取り、重要な社会インフラを攻撃するリスクが高まっているという認識があります。特に中国が先行する『5G』技術には警戒心が強いのです」

〔セキュリティー対策「NIST」基準への対応急げ〕

 ――国際ビジネスの規範が大きく変わるこの時に、国際的な市場を開拓するには、どうすれば良いでしょうか。

 「すでに米企業間では浸透しつつある経済安保順守の要件を、自社の経営に落とし込んでいくことですね。(1)守るべき技術情報の確定(2)守るための技術水準(3)製品・サービスに意図的なバックドアが仕込まれていないことの立証(4)情報を扱う社員の資格制度(5)スパイを防ぐチェック体制(6)インテリジェンス・捜査機関との連携――の社内整備を進めるべきでしょう」

 ――どれも重要ですが、ある程度の準備期間は要りますね。企業が取り組むべき優先順位はどうなりますか。まず今年中にでも着手すべき課題は何でしょうか。

 「第1に米国立標準技術研究所(NIST)が定めるセキュリティー対策基準『SP800-171』への準拠を急ぐことです。日本企業の多くは情報セキュリティーマネジメントの国際規格『ISO27001』を取得してきました。これと同じだと誤解している日本のIT担当者が多いことを懸念しています」

 「技術要件では『27001』は『171』の30%しかカバーしておらず脆弱な状態が放置されることになります。サイバー攻撃を受けて、自社に関わる機密情報や個人情報まで流出する恐れのある企業と取引する組織はないでしょう。日本企業は市場からの退場や善管注意義務違反で制裁を科せられるリスクがあります」

 「第2は海外生産拠点の見直しです。これまではハイスペックな軍事技術をダウングレードして民生用に転換されました。21世紀は逆に民生用の技術が軍事転用される時代です。ある米政府の高官は自動運転を研究する自動車メーカーに、ミサイルを製造する企業と同レベルのセキュリティー管理を求めると話しています。海外での情報漏洩を厳しく管理しサプライチェーンの見直しを急ぐべきです」

 「第3は各国の安全保障に関する情報収集です。昨年の米国防権限法で、米国輸出管理規制(EAR)の対象技術はバイオテクノロジーや人工知能(AI)まで広がりました。特に中国のスパイ活動に警戒するなど、トランプ政権と超党派の米議会は強硬姿勢で足並みをそろえています」

 「中国自身も独自の禁輸対象リストを作成し、ベトナムなどもインターネット安全法を制定して国外への個人情報持ち出しを禁じています。安全保障面で情報アンテナを張り巡らしておかないと、思わぬトラブルを招きかねません」

(聞き手は松本治人)』

トヨタ、EVで中国製特殊鋼板採用 品質で日本勢に迫る
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61444140T10C20A7MM8000/
 ※「アクセルペダル戻らない事件」の二の舞が、起こらなきゃいいんだが…。

ソフトB、アーム株売却検討か
米紙WSJ報道
https://www.47news.jp/economics/5011608.html

※ いろいろな「嫌がらせ」「圧力」「米発の逆風」を、身に沁みて感じたんだろうな…。