コロナ後の国際エネルギー情勢…。

コロナ後の国際エネルギー情勢 小山堅氏
日本エネルギー経済研究所専務理事

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61341590Z00C20A7TCR000/

『コロナ禍で国際エネルギー情勢は激変した。ここまで最も関心を集めたのは需要の劇的減少で、石油市場が大幅な供給過剰に陥り、原油価格が大暴落したことだ。今後も、原油・液化天然ガス(LNG)価格などの動向は世界の注目を集め続けよう。しかし今はコロナ禍による構造的・長期的変化に視線が向いている。ポストコロナの国際エネルギー情勢の行方だ。

コロナ禍は、いわゆる「エネルギー転換」を促進するのか、阻害するのか。以前から世界のエネルギー需給構造は転換期にあり、20世紀は「石油の世紀」だったが、21世紀はどのような世紀になるか、という問題意識があった。

この問題は、脱炭素化の取り組みに対するコロナ禍の影響という点から論ずることができる。欧州では、再生エネルギー・水素などクリーンエネルギーの普及促進を図ることで、経済復興を果たす政策が重視されている。これらの政策が奏功すれば、脱炭素化が進展し、エネルギー転換が促進されよう。

しかし同時にコロナ禍は、人類にとっての生存や安全が最優先される流れを作り出した。また、劇的に悪化した経済・雇用状況からの脱却も重要視されている。脱炭素化の取り組みがエネルギーコストを上昇させるようなことがあれば、その促進は容易ではなかろう。とりわけ、今後の世界のエネルギー需要増の中心となるアジア・発展途上地域での展開が重要だ。

エネルギー転換の先行きについては、化石燃料需要の行方が一つの鍵を握る。そこで注目されるのは、石油需要が構造的に抑制される可能性だ。テレワークの普及などに象徴される行動様式・経済活動の変容は、石油が担ってきた移動需要を構造的に低下させうる。数年前、電気自動車などの普及で石油需要ピークが来るのでは、という議論があった。ポストコロナでは、移動需要そのものがどうなるかが関心事項だ。

移動需要が抑制されれば石油需要が低下し、全体として省エネが進み、化石燃料比率が低下する。この進展は脱炭素化を促進する。他方、石油需要が抑制され、IT(情報技術)化、デジタル化も進むと、最終エネルギー消費全体に占める電力の重要性が高まる。その電力を、安定的・持続可能な形で、手ごろな価格で供給することが一層重要になる。

ポストコロナでは、戦略的に重要な財の供給チェーンを自国内、あるいは自国の影響下に置こうとする動きが強まるかもしれない。世界の産業配置が影響を受け、今後のエネルギー需要増の中心がどの国・地域になるかを注視する必要がある。

しかもエネルギー自給率向上を果たそうとする動きは、厳しさを増す世界のエネルギー地政学の下で、各国のエネルギー選択に影響を及ぼす可能性がある。これらは革新的エネルギー技術の開発を巡る技術覇権の観点からも注目される。ポストコロナのエネルギーの将来像には、大きな不確実性が存在する。様々な可能性・シナリオに対処できる、柔軟で戦略的な思考が求められる。』