中小のテレワーク導入 弁護士が教える5つの対応

中小のテレワーク導入 弁護士が教える5つの対応
ブレークモア法律事務所パートナー 末啓一郎弁護士
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO59924630T00C20A6000000?channel=DF220420206042

 ※ 正直、「こりゃあ、大変だ…。」というのが感想だ…。
 「テレワーク」と言うと、「ハード」や「ネットワーク」関係にのみ目が行きがちだが、「法務」はそれどころの話しじゃ無い…。
 素人が一読して、分かるようなものじゃ無いんで、ざっと目を通しておくくらいが、関の山だ…。
 しかし、最終的には「専門家」の知恵を借りるとしても、その「専門家」に相談を持ちかけたり、アドバイスを聞いたりするのも、ある程度は「当たり」がつけられる程度には、知識を仕入れておかないと、話しにならない…。
 大所帯では、そういう「部門」が存在し、「担当者」も置かれているんだろう…。しかし、「文系AI人材」でも見た通り、現在及びこれからずっと将来は、「何でもこなせる、一騎当千の強者(つわもの)」だけが、生き残っていける世の中になってしまったと思う…。
 努めて、「武芸百般」型、「オールマイティ人材」になるべく、全方向に自分の「能力開発」のビームを展開するようにしないとな…。

『新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、人の働き方が大きく変わってきた。在宅勤務などテレワークを今後も継続したいと考えるビジネスパーソンは多い。しかし、実際の運用では課題が山積している。特に中小企業では課題の多さにテレワーク導入に二の足を踏む企業もある。テレワークの法的問題に詳しい末啓一郎弁護士(ブレークモア法律事務所パートナー)は「中小経営者はテレワークのメリット・デメリットを把握して法的トラブルを回避する準備をすべきだ」と説く。もともとテレワーク導入は、人材確保などの面で中小企業にメリットが多いと言われてきた。就業規則運用経費労働時間賃金体系派遣社員といった5つのポイントについて末弁護士に聞いた。』
『〔テレワークと通常勤務 就業規則に違いは?〕
末弁護士はテレワークを「本来の事業場から離れた場所での勤務」と規定し、法規制において通常勤務と本質的な違いはないと説明する。新型コロナの感染拡大期に十分な準備もなく、拙速に在宅勤務態勢を実施した中小企業は少なくない。労働基準法89条は、労働者を常時10人以上雇用している会社の場合は就業規則の作成と届け出を原則として義務付けているが、テレワーク開始時点で記載されていなくても、のちのち法的トラブルはないのか。

末氏は「就業場所についての指示だけならば、通常の業務指示として対応できる」と説く。また就業規則の変更をするにしても、労働者にとって有利なものならば一方的に変更できるという。逆に不利益となる場合は、労働契約法10条により労働者からの個別の同意か変更に合理性があることが必要だ(※1)。』
『〔自宅のテレワーク環境は会社負担か?〕
次に、自宅にテレワーク環境を整える際の費用を負担するのは会社か社員か、という問題だ。実際に体験すると、会社から貸与されたパソコンや通信ツールだけでは足りないことに気づく。自然に専用の机、イス、クッション、照明などをそろえたくなるだろう。実際、外出自粛中には家具メーカーの店舗へ多くの購入客が集まり「3密」状態だったというケースもあった。日本テレワーク協会(東京・千代田)はホームページで、採光やグレア(まぶしさ)防止、騒音防止にも配慮を促している。

具体的に購入を命じた場合を除いて、こうした関連費用を会社側が提供する法的な義務は基本的にはない。しかし末氏は「会社側の負担とする制度を設けるなど配慮して、テレワークで効果的にできる業務を増加することは、社員のモチベーションを高め、優秀な人材を確保することにつなげられる」と唱える。特に現在は事業継続性の可否が、企業の信用性に直結している。金融機関の融資判断でも重視され、具体的な資金繰りに大きな影響を与えている。社員をつなぎ留めておくことは企業の命運にかかわる課題になってきている。』
『〔労働時間どう把握?〕
末氏が強調するのは、テレワーク時の労働時間に関して適切なチェックを欠かさないことの大切さだ。「働き方関連法により、労働安全衛生法66条8の3の規定が新設されたことは見逃せない」と指摘する。これまでも、賃金支払いの関係で把握義務はあった。新たに管理職や裁量労働制などの場合も、健康管理の観点から社員の労働時間の状況の把握を義務付けている。法律の定めによる以上に、安全配慮義務などの点から重要なポイントになっていると、末氏は指摘する。』
『実際の問い合わせが多いのは、労働基準法38条2第1項の「事業外みなし労働時間制」で、労働安全衛生法とは異なる経営上の注意が必要だ。会社にとって、原則として残業支払い義務がないというメリットに加え、社員の生産性向上を促しやすい面もある。(1)業務が自宅で行われる(2)パソコンが常時通信可能でない(3)随時・具体的な指示がない――などが、事業外みなし労働時間制の「労働時間が算定しがたい場合」として適用できる。ただ単純に「白か黒か」の判断は難しいと末氏はクギを刺す。「裁判例でもケースバイケースで判断されている」(末氏)としている(※2)。しかも、仕事のやり方が変われば結論も変わりうる。末氏は「専門家の意見を聞いて基準を設けておき、適宜見直すことが望ましい」とアドバイスする。』
『〔深夜手当や通勤費は?〕
テレワーク普及が、これまでの給与体系にも影響することは確実だ。末氏は、いずれ人事評価制度の見直しも必要になるとみる。みなし労働時間でも、社員からの申告を前提に「深夜割増賃金、休日割増賃金」を支払う必要はある。一時的に「在勤手当」や「リモートワーク飲み会代」を支出するケースも増えている。メルカリは4月、自宅での勤務環境構築やオンライン・コミュニケーションなどのために6万円(半年間)の在宅勤務手当の支給を決めた。

一方、通勤費は出社状況に応じて削減できる。在宅勤務中の水道光熱費なども公私の区別はつきにくい。末氏は「当面は社員負担になるケースが多いだろう」とみる。その一方で、オフィスコストの減少などを勘案して、新たな社員手当などでの配慮を促している。』
『〔派遣社員の処遇は?〕
新型コロナウイルスの感染でクローズアップされているのが、派遣社員の処遇だ。中小企業でも派遣社員を受け入れたり、フリーランスのデザイナーらに仕事を発注することは珍しくない。他方、自社が派遣元になっている中小も少なくない。出社が困難になり、テレワークによらず休業をさせる場合の休業手当の扱いなどは派遣元・派遣先・派遣労働者の利害対立が生じやすい。

とりわけ機械の保守・メンテナンスなど、現実的にテレワークになじまない業種での対応は難しい。さらに派遣先に常駐してシステム開発するエンジニアも、取り扱うデータのセキュリティー確保が悩ましいなどハードルは高い。末氏は「現状は労働法規と民法の交錯する問題をどう解決するかがポイントだ」と話す。

現実的には、派遣契約の解釈問題、労働基準法の60%の休業手当支払い義務、民法上の不可抗力の場合の給与請求権の消滅、使用者側に責任がある場合の100%の支払い義務などが、それぞれ錯綜しかねない。「派遣先、派遣元、派遣社員の三者で、将来的な見通しを踏まえた上で利害調整するほかない」と、末氏は一方的な法的解釈を戒めている。現在は個々の企業にとってのテレワークに関する課題が、浮き彫りになってきている時期だと末氏は説く。』
『中小企業のテレワーク導入は大企業に比べ遅れているとみられ、国や地方自治体は助成金制度など通じ導入を後押ししている。テレワークを導入できれば、生産性向上、離職防止、コスト削減、事業持続性の確保などが期待できる。しかし末氏は、テレワークのデメリットにも目を向ける必要があると指摘する。(1)公私の区別が曖昧になる弊害(2)出社しないことによる業務効率低下(3)組織の一体感の喪失(4)セキュリティー上の懸念――などだ。ウィズコロナの時代もテレワーク普及の流れは止まりそうにない。末氏は「経営トップはメリットの最大化とデメリットの最小化を常に考えて事業計画を策定すべきだ」と説いている。』
『※1 末氏は「は「最高裁の『平成28年(2016年)2月19日判決』(山梨県民信用組合事件)に示されているように、重要な労働条件の変更の場合、形式的な同意があるからといって、ただちに変更が有効になるわけではない。合理的な変更であることが肝要だ」と注意を促している。

※2 参考になるのが平成26年(14年)1月24日の最高裁判決(阪急トラベルサポート事件)だ。海外ツアー添乗員の場合を(1)添乗員の携帯電話が常時電源オン(2)詳細・正確な添乗日報(3)事後報告義務――などで「労働時間を算定し難い」とはいえないとした。他方、営業社員については情報通信機器などで労働時間の把握が可能であっても「過重な経済的負担を要する、煩雑に過ぎるといった合理的な理由がある場合」には、算定し難い場合にあたると判断された(東京地裁平成30年1月5日、控訴審東京高裁6月21日判決)。

(松本治人)』