[FT]監査法人 直らぬ機能不全

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61080620S0A700C2TCR000/

『同社の監査を担当していた大手会計事務所アーンスト・アンド・ヤング(EY)は、最大10億ユーロ(約1210億円)の預金があるとワイヤーカードが主張していたシンガポールの銀行に、少なくとも3年間、監査に必要な口座情報の開示を要請していなかった。その代わり、EYは第三者の受託会社やワイヤーカード自体から提供された文書やスクリーンショット(画面保存)に基づいて監査を進めていたのだった。』
『一部の人にとってはよく耳にする話だろう。2003年、イタリア大手食品グループのパルマラットを巡って様々な疑惑が広がっていた。その年の年末、米バンク・オブ・アメリカがパルマラットがオフショアに抱える関連会社が39億ユーロ(約4720億円)の預金を保有していることを示す文書は偽造されていたと明らかにした。パルマラットはその数日後、伊政府管理下に置かれた(編集注、同社は後にフランスの乳製品大手に買収された)。1999年から破産申請まで同社の会計監査を担当した大手会計事務所デロイトは後に、パルマットに1億4900万ドル(約160億円)、同社に出資していた投資家らに850万ドル(約9億1300万円)を支払うことに合意した。』
『だが、大企業が自社の資金をどこにどう保有しているかについて、監査人を務める大手監査法人が驚くほど無関心だった例はこれだけではない。米銀大手JPモルガン・チェースは2010年、7年間にわたり最大230億ドル(約2兆4700億円)に上る顧客たちからの預かり資金を別の口座で管理せず、自行のファンドの資金と混在させていたことを認めた。会計監査人の大手会計事務所プライスウォーターハウスクーパース(PwC)は何度も、同行が顧客からの預かり金を適正に管理しているとしていたが、後に英国で140万ポンド(約1億8700万円)の罰金を科された。当時、英国の会計事務所に対する罰金としては過去最高額だった。

一方、EY、デロイト、PwCと並んで「ビッグ4」と呼ばれる大手会計事務所のKPMGも、経営破綻した英建設大手カリリオンの監査を巡る疑惑で窮地に陥った。18年には会計業務など企業統治に関する規制を所管する英財務報告評議会(FRC)が「受け入れ難い監査品質の劣化だ」として、デロイトに制裁を科した。』
『事実が明らかになった後になって監査人を責めるのは簡単だ。ワイヤーカードに関しEYは、「19年度のワイヤーカードの監査については、第三者がEYを故意にだます目的で虚偽の書類を提出してきた。監査業界としては、最も徹底的、かつ幅広い監査を進めても、共謀による不正は暴けない場合があるとされている」と主張した。

だが、空売り筋の間では何年も前からワイヤーカードは何かがおかしいとささやかれていた。また、同社の新しい最高経営責任者(CEO)に就任したジェームス・フライス氏は取締役メンバーらに対し、基本的なチェックをきちんと進めていれば不正は明らかになったはずだと語ったという。』
『「ビッグ4の会計事務所は、さっさと確認を済ませて、すぐに問題なしと署名できるのがいい監査だと考えている。問題を発見したいなどとは思っていない」。こう指摘するのは税の元査察官で「Bean Counters」(編集注、会計士などカネに厳しい職業の蔑称。邦訳未刊)の著者リチャード・ブルックス氏だ。そして、こう続ける。「彼らは自分たちの監査業務を『安心の保証』と呼び、顧客を安心させることが自分たちの仕事だと考えている」

監査というビジネス構造自体が、この問題を悪化させている。監査法人は監査の対象である企業から選任され、その企業から報酬を得るのであって、もっと懐疑的な姿勢で監査に取り組んでほしいと考えている可能性が高い投資家や規制当局に依頼されて監査をしているのではない。しかもビッグ4にとって会計監査は、コンサルティングや税務サービスなどうまみの多い事業を提供する大きな組織の一部門にすぎない。これらのサービスは、監査部門の顧客になり得る企業に提供される。』
『こうした利益相反の問題を改善しようとする動きは2000年代初めから何回もあった。英米では監査する顧客に提供できる他のサービス業務を制限しようとした。さらに英FRCはビッグ4に監査業務にかかるコストと同業務から得られる利益は、自主的に他の事業と分離するよう要請した。だがこの計画、つまりFRCを新たな規制組織に刷新し、新組織に監査業務をほかの業務と分離させるだけの強制力を発揮できる権限を与えるという法案の審議は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)で中断している。』
『ワイヤーカードの件は監査業務の問題が英米にとどまらないことを示している。監査をコンサルティング業務と切り離しても、監査する側にとっては、経営側の言葉をうのみにして、監査にかけるコストを削減したり時間節約のために重要なプロセスを飛ばしたりするインセンティブがなくなるわけではない。

「ビール工場を監査するならたるを数えるだけではだめで、たるを揺らして全部、中身が満タンであることを確かめる必要がある」と欧州議会の経済・通貨委員長を務めたシャロン・ボウルズ氏は言う。「だが、監査を担当する人は、誰もが自分がきちんと調べていなくてもばれるとは思っていない」

こんな話はもう聞き飽きた。監査のモデル自体を考え直す時だ。私たちは、当局が銀行業界のいいなりになってしまうと一般市民がその損失を被ることになることを既に学んだ。監査法人が、”餌”を与えてくれる主人の手を喜んでかむことなど決してない。

By Brooke Masters

(2020年7月1日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/)』

 ※ 肝心かなめの「会計監査」が、この体たらくだ…。


 「株式会社」制度の根幹は、「株主(出資者)有限責任」→厳正な「会計監査(第三者かつ専門家としての「会計監査人(「公認会計士」の資格が必要)」がする)」→会社の決算書類(「損益計算書」、「貸借対照表」)の開示…、などだ…。


 何段階も、会社の運営状態・財産状態を示す資料を作成・開示させて、何人もの内部者(取締役、監査役などの経営陣)、何人もの外部者(金融機関、取引先なんかの会社債権者など)、さらには「社外取締役」なんかも設けて、何段階も目を通させて、監視するように「制度設計」している…。
 その専門家たる「会計監査人の会計監査」が、この体たらくではな…。


 しかし、現実はそういうものだ…。
 そういうものであることを前提に、自分の行動を決定していくより他は無い…。

ソフトバンクG出資に絡む独ワイヤーカード仕組み債、売却手続き始まる

https://jp.reuters.com/article/wirecard-accounts-debt-idJPKBN2433IN

『ソフトバンクグループによるワイヤーカードへの出資は、株式の直接取得ではなく、将来株式に転換する可能性がある新株予約権付社債(転換社債)の引き受けを通じて行われた。

出資の直後にクレディ・スイスは、ソフトバンクが保有する転換社債を裏付けにする9億ユーロ相当の新発債を投資家に販売。実質的なリパッケージ債(仕組み債)で、この販売はソフトバンクグループに利益をもたらした。

仕組み債は著名投資家ウォーレン・バフェット氏が投資する際、自身の投資会社、バークシャー・ハザウェイにもたらすリスクを抑えるために活用した手法として有名だ。

ワイヤーカードの仕組み債を現在保有する債権者は、今回の売却で多額の損失を被るとみられる。リパッケージ債NL205575421=は2日に額面1ユーロ当たり13.5セントで取引され、3週間前の73.5セントから急落している。』

 ※ 計算すると、大体、元値の18.4%の価値に下落した勘定だ…。元値の2割以下の価値に、下落したわけだ…。1000万の退職金を突っ込んだら、184万円の価値に下落した勘定だ…。
 これだから、「投資」は、恐ろしい…。「仕組み債」とか、それこそ「仕組み」のよく分からないものに、投資すると目に遭うことになるという、いい例だ…。
 「よく理解できないものには、手を出すな!」…。これが、「鉄則」だ…。たとえ、どんなに「表面利率」が有利であってもだ…。

日本企業のハンコ文化をどれだけ叩いても、「脱ハンコ」が進まない根本原因

https://diamond.jp/articles/-/241962

『では、なぜこうなってしまうのかというと、まず「コスパ」の問題がある。中小企業は体力的に、そこまで設備投資ができない。国がテレワーク導入に補助金を出してくれるといってもたかが知れているので、これまで通りに出社して、リアルの会議をして、紙の書類にハンコをつくやり取りを続けていた方が、会社としては懐が痛まない。つまり、現状維持の方が「安上がり」で済むのだ。

 それに加えて、最も大きな障壁は「小さな会社になればなるほど、そこまでIT化の必要に迫られていない」という点である。

 先ほど日本企業の99.7%は中小企業だと述べたが、実は日本の場合、その中でもとりわけ多いのが「小規模企業」だ。421万ある日本企業の87%、366.6万社を占めているこの「小規模企業」は、「製造業・その他」の場合は従業員20人以下、「商業・サービ業」では従業員5人以下と定義されている。

 では、これくらいの規模の会社に「脱ハンコ」「リモートワーク」というものが、そこまで切実に必要とされているのかを考えていただきたい。

 もちろん、あればあったでかなり便利だろう。社員は喜ぶ。しかし、なければないで、別にそこまで業務に差し障りはないのではないか。』
『社員が20人以下の会社ならば、承認や決済をもらう相手もたかが知れている。下手をすれば、ハンコをもらう上司は隣の席に座っていることもあるだろうし、パソコンのネットワーク上でやって、これまで通り紙を打ち出してハンコをもらっても、業務面ではそこまで劇的に効率化しないだろう。

 何か事を進めるために組織内を駆けずり回って、いくつもハンコをもらわないといけない巨大組織の場合、ハンコ業務をなくすことで劇的に業務効率が改善されるが、アットホームな小さな組織の場合、そこまで目に見えて大きな効果はない。そのため、小さな会社の経営者たちは、「わざわざそこまでやらなくてもいいだろう」と、社員たちに従来のハンコ業務を惰性で続けさせてしまうのである。

 つまり、この「小さな会社になればなるほど、そこまでIT化の必要に迫られていない」というのが、脱ハンコの最大の障壁なのだ。』
『日本企業の99.7%にあたる419.8万社で働いている約2784万人の労働者にとって、「脱ハンコ」というのは、一部の大企業や意識高い系の企業が始めた最先端の取り組みであって、自分たちのワーキングスタイルとあまり関係のない、別世界の話だということがわかっていただけるだろう。

 それはつまり、この問題に関してハンコ業界やはんこ議連、ハンコ出社を強いる上司を憎々しげにディスることは、ほとんど意味がないということだ。「印章文化を守れ」とか、「日本の社畜文化が悪い」とか、そうした類の話でもない。

 言ってしまえば、この問題の根っこは「産業構造」にある。「小さな会社が異常なほど多い」という日本特有のバランスの悪い産業構造を変えないことには、どんなに使い勝手のいい電子印鑑や電子承認システムができようが、政府が補助金をバラまこうが、「脱ハンコ」は進まないのだ。』
『社会として50年近く「変えよう、変えよう」と呼びかけても、結局変えることができなかったということは、シンプルに日本人の大多数が「脱ハンコ」にメリットを感じていなかったからだ。

 では、なぜ感じなかったのか。実は日本の中小企業は、高度経済成長期から爆発的に数が増えた。それは言い換えれば、「脱ハンコ」に切り替えることにそこまでメリットを感じない組織が、日本社会に一気に広まったということでもある。この日本の産業構造が「ハンコ」という古い商習慣を「現状維持」でビタッと定着させた可能性はないだろうか。

 そうだとすると、日本の「脱ハンコ」の道のりはまだまだ長い。』
『これまで述べたように、日本企業の99.7%という圧倒的多数を占める人々にとって、電子承認や電子印鑑は導入した途端にチャリンチャリンとカネを生むほど、魅力的な設備投資ではない。「あったらあったでいいけれど、なくても別に困らねえや」というくらいだ。終了したポイント還元のように、「脱ハンコにしたら○%還元」といった明確な「得」がない限り、日本企業の大多数を占める小さな会社が自発的に「脱ハンコ」に向けて動き出すとは考えにくい。』
『実は「脱ハンコ」とまったく同じで、戦後、定期的にやめようと政官民で呼びかけても、一向にやめられないものがもう1つある。それは「満員電車」だ。

 高度経済成長期の満員電車は阿鼻叫喚の地獄で、子どもが「圧死」するという痛ましい悲劇も起きた。そのたびに政府や国鉄が「ズレ勤」を呼びかけても、現在に至るまで満員電車は解消されていない。足元でもコロナの外出自粛を経て、すっかり平常運転に戻っている。

 満員電車の問題で、定時出社を求める企業や満員電車に揺られるサラリーマンを攻撃したところで、解決できないということは言うまでもない。』
『「脱ハンコ」を推進したい方たちも、ハンコ業界やハンコ議連、ハンコ好きのおじさんたちなど、思想の異なる人々を攻撃してこの問題を解決しようとするのではなく、日本特有の産業構造にも着目して、ぜひ建設的な議論をしていただきたい。

(ノンフィクションライター 窪田順生)』

 ※ 相当に説得力のある論だと思う…。
 そして、そこを「票田」にしている自民党の強さの源泉でも、ありそうだ…。
 野党というのは、煎じ詰めれば、「労働組合」連合と言える…。
 与党vs.野党の争いは、「小規模零細企業」vs.「労働組合連合」の戦い…、とも言えそうだ…。そして、そのどちらからも「組織化」されていない層が、「浮動票」となっている…。そういう構造のようだ…。
 おそらく、日本だけの話しではなく、各国に共通する話しなんだろう…。トランプvs.バイデンの戦いなんかにも、ある程度は適用できそうな構図だ…。
 独の政治状況、仏の政治状況はどうなのか…。
 はたまた、中ロの「民主主義」とは言えない国家の政治状況は、どうなのか…。それを分析しようとする場合の、「視点」「軸」は、抽出できるものなのか…。
 そういうことを、絶えず考えていかないとな…。