中途半端な管理職は要らなくなる

中途半端な管理職は要らなくなる、リモートワークの残酷な現実
https://diamond.jp/articles/-/240822

『――コロナショックを受けて、経営学の世界ではどんな議論が始まっていますか。

入山 非常に大きな論点になっているのは、リモートワークが定着する中で、どうやって企業という組織を動かしていくのかということです。

 デジタルツールを使ったリモートワークでは、情報や知識のほとんどは文字や音声、映像といった形で共有できます。ではそういった情報共有のレベルを超えて、リーダーの言葉に共感してもらう、心の底から納得してもらうといったことが、リモートワークでどこまで可能なのか? リモートワークがアフターコロナの業務の基本になっていく中で、デジタルツールでも社員を腹落ちさせられるかどうかが後々、企業をふるい分けていくのではないでしょうか。

 この前提にあるのは、センスメーキング理論です。センスメーキングとは日本語で言えば「腹落ち」。正しい答えが簡単には見つからない状況で、物事に何らかの意味を与え、組織のメンバーを納得させ、足並みをそろえていくことです。組織心理学者が発展させ、経営学に大きな影響を与えてきました。僕は日本企業にとって、このセンスメーキングが一番重要な論点と考えてきましたが、アフターコロナという変化の大きい環境ではますます重要になりそうです。

杉田 アフターコロナの世界では、企業とそこで働く人々の役割を定義し直す必要があります。このような「企業が存在する上でのパーパス(目的)」をどう定めるかは、近年の経営コンサルティングの重要な領域になっています。リモートワークで社員を腹落ちさせられるかという問題とつながっていますね。』
『もう一つリモートワークについて実務的な観点から言うと、リモートワークをうまくできる企業とそうでない企業との間で、経営のスピードが全然違ってきそうです。うまくできる企業では、現場のリアルタイムの変化をトップマネジメントが直接吸い上げられるようになり、経営判断を下すサイクルを従来より格段に速く回せるようになるでしょう。

 言い換えればリモートワークでは組織の階層が減り、中途半端な中間管理職が不要になります。中間管理職が組織の階層の間で、情報を経営層に上げたり、下に伝えたりしていたやり方が、根本的に変わってくるのです。』
『入山 ネスレ日本の社長だった高岡浩三さんは先日、「もうホワイトカラーは要らない。これからは全員、ブルーカラーになる」と言っていました。これからの企業組織というのは、経営層と現場の仕事をする人が大半で、中間管理職としてのホワイトカラーは要らないんだと。極端に聞こえるかもしれませんが、方向感としてはそうなるのだと思います。

 今、大企業の間接部門にいっぱいいるホワイトカラーの多くは、すでにある情報を深掘りして精度を高めていく「知の深化」的な作業をしていることが多い。しかしこの作業の多くは、AI(人工知能)のような機械でできるようになります。それに対して、コロナの後の不確実な時代には、遠く離れた所にある知を幅広く探索して組織に持ち帰る「知の探索」が非常に重要です。こっちはまだまだAIでは代替できません。』


 ※ けっこう重要な視点を出していると思う…。
 昔(むかし)の「支配階級」は、「サムライ」だった…。それは、決して「文官」では無く、ある程度の「知的訓練」を積んだ、「武官」だった…。だからこそ、「文武両道」ということが言われた…。
 今また、昔(むかし)のように「ITにも通じ」「AIにも通じている」、つまり「現場の汚れ仕事もこなせる」人材が必要とされている…。ある意味で、「何でもありの、戦国時代」みたいな状況に戻っている、と言うことができるだろう…。
 「頭でっかちの」「理屈を立てることだけに長けている「文官」には、もう用が無い」んだ…。
 そこら辺をしっかり認識していないと、変化に対応していけなくなる…。

『――杉田さん、経営コンサルティングは「知」そのものを売り物とするビジネスといえます。優秀なコンサルタントの条件は何ですか。

杉田 まず疑うことが前提です。直感的に「これって本当だろうか」という引っ掛かりを感じられるかどうか。そしてそれは自分自身の引っ掛かりだけではなく、議論の場で誰かが「ん?」と疑問を示したときに、その人の引っ掛かりを拾うことも不可欠です。自分の中にはない疑問や気付きを、人の頭を使って獲得しないと、絶対に進歩しません。

 経験の乏しいコンサルタントの中には、自分の頭だけで考えてしまい、疑問を示した相手に対し「この話を理解できないなんて、ちょっと頭が悪い」と思ってしまう人がいます。でも、それはそのコンサルタントの方が実は頭が悪い。人の経験を借りる一番重要なチャンスを逃しちゃっているから。

 何かを勉強するときにも自分で本を読むだけでなく、よく分かっている人に「話して、教えて」って頼む方が絶対にいい。早く学べる人はだいたいそうしていますね。

入山 自分で分からないことは人に聞けばいい。大事なのは聞くネットワークを持っているか、これを知っているのは誰かと考えられる力があるかですね。

杉田 狭い業界の常識や、同じような思考しかできない人たちだけで議論をしていても、面白いものは生まれてきません。まさにさっきの「知の探索」が重要だという話です。自分たちの狭い世界の中だけではなく、遠い所の知を探索するには、外部の「知を持った人」をチームに入れて議論することが不可欠です。

入山 それがイノベーションにつながる。イノベーション研究の第一人者であるクレイトン・クリステンセン氏が、破壊的イノベーションを起こす企業家の要素を五つにまとめています。まず、一見無関係に思えるものを関連付ける力。次に常識を疑う問いを発する質問力。それから観察力。取りあえず試しにやってみる実験力。最後の一つがネットワーク力で、自分が知らない世界について聞くネットワークを持っているかどうか。

杉田 言い換えれば、学力ではなく学習力ですね。昨日やったことは今日にはもう時代遅れになるんじゃないか、次の進歩のカギはどこにあるのか。こういう疑問を持って、実験することを続けられるかどうか。こういう学習力が問われる時代です。』

※ ちょっと、「知」という側面に、偏り(かたより)過ぎている嫌いはあるが、「知の探索」の重要性という観点からは、その通りだろう…。
 しかし、時代は、現状は、そういう「知の探索」だけで「問題解決」できるほど、甘いものでは無くなっていると思う…。現場での「汚れ仕事」を厭わずこなして行く「突破力」…。
 さらには、他者をも巻き込んで奮い立たせていく「統率力」などが、求められている…。
 ある意味、一介の「油売り」「針売り」から、「領国経営」ができるまでにのし上がった「戦国武将」みたいな人材を、要求しているんだ…、という気がする…。