https://jp.reuters.com/article/iraq-security-soleimani-idJPKBN1Z5111
※ トランプ政権が、殺害を決定した「要因」を、相当詳細に記述していると思われるので、さわりを紹介しておく…。
『(※昨年の)10月中旬、イランのガセム・ソレイマニ少将は、イラクのシーア派民兵組織の協力者と会合を開いた。場所はチグリス川河畔にあるバグダッドの別荘で、対岸には在バグダッド米国大使館のビルが並ぶ。イラクに駐留する米軍への攻撃を画策し、やがて自らの死を招く事態につながる戦略会合だった。』
『革命防衛隊を指揮するソレイマニ司令官は、イラク側協力者のトップであるアブ・マフディ・アル・ムハンディス氏(※ スレイマニ司令官とともに、ミサイル攻撃で殺害された)を初めとする民兵組織有力幹部に、イランが提供する先進的な兵器を使ってイラク駐留米軍への攻撃を強化するよう指示した。この会合について報告を受けた2人の民兵組織幹部、2人の治安当局者がロイターに語った。』
『会合が開かれたのは、イランの影響力拡大に反発するイラク民衆の抗議が勢いを増していた時期だった。放置すれば、イランに居心地の悪い注目がさらに集まる懸念があった。ソレイマニ氏には、米軍に対する武力反撃を挑発し、イラク国民の怒りの矛先を米国に向ける狙いがあった、と上記の情報提供者、シーア派のイラク政治家、アデル・アブドゥル・マフディ首相に近い政府当局者らは語る。』
『同司令官の策動は、最終的に、3日の米国による攻撃を誘発した。彼自身とムハンディス氏は首都バグダッドに向かう途中、搭乗する車列が空爆を受けて死亡し、米国・イラン両国間の緊張は一気に高まった。』
『この会合の2週間前、ソレイマニ司令官はイラン革命防衛隊に対し、2カ所の対イラク国境検問所を経由して、自走式多連装ロケットランチャーやヘリコプター撃墜能力のある携行式ミサイルなど先進的な兵器をイラクに移動させるよう命じた、と民兵幹部やイラク治安当局者は話した。』
『会合について報告を受けた民兵組織関係者によれば、ソレイマニ司令官は、ムハンディス氏によって設立されイランで訓練を受けた軍団「カタイブ・ヒズボラ」に、この新たな計画の指揮を執るよう命じたという。
「(こういうグループなら)米国側に探知されにくいだろう」。ソレイマニ司令官は会合参加者にそう語った、と民兵組織関係者の1人は言う。』
『中東地域における米軍攻撃の中核としてソレイマニ司令官が選んだのは「カタイブ・ヒズボラ」だった。民兵組織幹部の1人がロイターに語ったところでは、ドローンを使ってロケット弾攻撃の標的を偵察する能力を備えていたからだという。この民兵組織幹部によれば、ソレイマニ司令官指揮下の部隊が昨秋イラク国内の民兵に供給した兵器の1つが、イラクが開発した、レーダーによる監視システムを回避できる能力を備えたドローンだったという。』
『イラク国内では、米軍部隊が駐留する基地に対しイランの支援を受けた組織による攻撃が増加、その手段も高度化していた。ある米軍高官は12月11日、あらゆる当事者が統御不可能なエスカレーションへと追いやられている、と語った。
この高官の警告の2日前には、バグダッド国際空港近くの基地に4発のロケット弾が着弾し、イラクの精鋭部隊であるテロ対策部隊(CTS)の隊員5人が負傷した。この攻撃についてはどの組織も犯行声明を出していないが、ある米軍当局者は、情報機関による活動及びロケット弾・発射機に関する現場検証によれば、イランの支援を受けたシーア派ムスリム民兵組織、特に「カタイブ・ヒズボラ」と「アサイブ・アフル・アル・ハック」の関与が疑われると話している。』
『12月27日には、イラク北部の都市キルクークに近いイラク軍基地を狙って30発以上のロケット弾が発射された。この攻撃により、米国の民間請負業者1人が死亡し、米軍・イラク軍の軍人4人が負傷した。
米国政府はこの攻撃を「カタイブ・ヒズボラ」によるものとして非難したが、同組織は否認している。米国は2日後、「カタイブ・ヒズボラ」に対する空爆を行い、少なくとも民兵25人が死亡、55人が負傷した。』
『こうした攻撃は、2日にわたって、イランの支援を受けたイラク民兵組織の支持者による暴力的な抗議行動を引き起こした。彼らは米国大使館の境界に押し寄せ、投石した。これを受けて米国政府は同地域に増援部隊を派遣し、イラン政府に対し、実力行使をほのめかすに至った。』
『1月2日、つまりソレイマニ司令官殺害の前日、マーク・エスパー米国防長官は、予想されるイラン支援下の民兵組織による攻撃から米国民の生命を守るため、予防的な行動を取らざるをえない可能性があると警告した。
「状況は変化した」と同長官は語った。』
Iran’s Soleimani and Iraq’s Muhandis killed in air strike: militia spokesman(JANUARY 3, 2020 / 10:22 AM)
https://www.reuters.com/article/us-iraq-security-blast-soleimani/irans-soleimani-and-iraqs-muhandis-killed-in-air-strike-militia-spokesman-idUSKBN1Z201C
イランのデモ「過去最大」 革命体制、強い危機感 異例の弾圧で警告(2019.11.29 18:29)
※ 『(※ 11月)15日に始まったデモは20日にはヤマ場を超えたもようだ。政府はインターネットを遮断し、狙撃手が群衆に発砲したともいわれる。ここ数年のデモでは異例の弾圧だ。在外反体制組織の「イラン国民抵抗評議会」(NCRI)は450人以上が死亡、4千人以上が負傷し、逮捕者は1万人を上回るとの見方を示した。』
『中東のメディアによると、トランプ米政権が石油の全面禁輸を含む制裁を再開し、イランの石油売却収入は激減。来年3月からの新年度予算のメドが立たない状態だという。稼働している精製施設が少ないため、政府はガソリンをアジアなどから輸入する一方、年間690億ドル(約7兆6千億円)の補助金を投じてエネルギーの国内料金を低く抑えてきた。今回のガソリン値上げはこうした政策の限界を示した格好だ。
最高指導者直属の革命防衛隊は国内で金融や石油化学、通信などのビジネスを幅広く手がけており、国際的な孤立が深まれば国内市場の支配が強化できると考えている可能性がある。政府にはデモ参加者を武力弾圧することで、安易にデモに加わらないよう警告する狙いもあったとみられる。』
https://www.sankei.com/world/news/191129/wor1911290016-n1.html
イランの弾圧記録送付を 米長官、デモ参加者に呼び掛け(2019年11月23日00時48分)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2019112200722&g=int&utm_source=yahoo&utm_medium=referral&utm_campaign=link_back_auto_aja
「宮崎正弘の国際情勢解題」令和弐年(2020)1月14日(火曜日)通巻6338号(※サイトでの配信は、廃止され、メルマガの形でメールで送信する形式に変わった。登録(無料)すると、送られて来る)
さわりを紹介しておく…。
『テヘラン異変。ソレイマニ司令官の追悼ポスターを剥がす抗議デモ 宗教政権、インフレ対策に無能を露呈、「対米戦争」どころじゃないって』
『 過日のイランに於ける抗議デモ、つまり狂信的宗教政権と、それを暴力で守る革命防衛隊の「政府」を、イランの民衆がいかに思っているかを象徴した。
軍が抗議デモに発砲し、1500名が死んだと報じられた。死者1500名? 天安門事件ではないか。
イランのインフレ、じつはもの凄いことになっている。
賃金は上がらず、若者に職はなく、物価だけが暴騰をつづけ、ついに民衆はテヘラン政権の無能に怒りを爆発させた。対米戦争? ソレイマニ司令官が殺害された報復。そういう繰り言を言う前に、われわれの生活をナントカしろ、というわけだ。
これまで問題視されたことがないが、イランの人口動態の激変ぶりが露骨だ。
少子化が急速に進んで僅か三年前の四分の一、五年前の五分の一、つまりイラン人が子供を産まなくなったのではなく、生活苦で子供を作れなくなったと見るべきなのだ。
庶民の台所を直撃した猛烈インフレは、つぎにベネズエラ型に移行する可能性がある。ベネズエラは、生活困窮、無政府状態。450万人の国民がブラジル、コロンビアなどへ逃げた。米国の制裁で命綱の原油輸出が出来ず、経済回復は到底望めない状況である。』
(要点のまとめ)
・去年の10月中旬に、ソレイマニ司令官とイラク側協力者のトップであるアブ・マフディ・アル・ムハンディス氏を初めとする民兵組織有力幹部は、米軍に対する攻撃についての戦略会合を開催した。
・その会合の2週間前、ソレイマニ司令官はイラン革命防衛隊に対し、2カ所の対イラク国境検問所を経由して、自走式多連装ロケットランチャーやヘリコプター撃墜能力のある携行式ミサイルなど先進的な兵器をイラクに移動させるよう命じていた。
・さらに、イラク軍基地に駐留する米軍に対するロケット弾攻撃を実施できる新たな民兵グループを組織するようもとめた。米国側に顔の割れておらず、目立たないメンバーであることが条件だった。
・それで、ソレイマニ司令官は、ムハンディス氏によって設立されイランで訓練を受けた軍団「カタイブ・ヒズボラ」に、この新たな計画の指揮を執るよう命じた。
・その理由は、ドローンを使ってロケット弾攻撃の標的を偵察する能力を備えていたからだ。この民兵組織幹部によれば、ソレイマニ司令官指揮下の部隊が昨秋イラク国内の民兵に供給した兵器の1つが、イラクが開発した、レーダーによる監視システムを回避できる能力を備えたドローンだったという。
・それで、「カタイブ・ヒズボラ」は、ドローンを使って米軍部隊が配備された地点の空撮映像を収集していた。
(※11月15日から、イラン国内で激しい反体制デモが生じた。1000人以上が犠牲になったという情報もある…。)
(※11月28日から、イラク領内で激しい「反シーア派(スンニ派と思われる)」による「イラン領事館」に対する反イラン抗議デモが生じた。 イラン領事館にまた放火 イラク南部、反発強まる https://www.jiji.com/jc/article?k=2019112800812&g=int
イラク反政府デモで45人死亡、イラン領事館放火受け弾圧強まる https://jp.reuters.com/article/iraq-protests-idJPKBN1Y214P イラン、イラクに「断固とした」対応要求 デモ隊の領事館襲撃受け https://www.cnn.co.jp/world/35146138.html )
・12月9日には、バグダッド国際空港近くの基地に4発のロケット弾が着弾し、イラクの精鋭部隊であるテロ対策部隊(CTS)の隊員5人が負傷した。この攻撃についてはどの組織も犯行声明を出していないが、ある米軍当局者は、情報機関による活動及びロケット弾・発射機に関する現場検証によれば、イランの支援を受けたシーア派ムスリム民兵組織、特に「カタイブ・ヒズボラ」と「アサイブ・アフル・アル・ハック」の関与が疑われている。
・12月27日には、イラク北部の都市キルクークに近いイラク軍基地を狙って30発以上のロケット弾が発射された。この攻撃により、米国の民間請負業者1人が死亡し、米軍・イラク軍の軍人4人が負傷した。
米国政府はこの攻撃を「カタイブ・ヒズボラ」によるものとして非難したが、同組織は否認している。
・12月29日、米国は、「カタイブ・ヒズボラ」に対する空爆を行い、少なくとも民兵25人が死亡、55人が負傷した。
・12月30、31日、イランの支援を受けたイラク民兵組織の支持者による暴力的な抗議行動を引き起こした。彼らは米国大使館の境界に押し寄せ、投石した。これを受けて米国政府は同地域に増援部隊を派遣し、イラン政府に対し、実力行使をほのめかすに至った。
・1月2日、マーク・エスパー米国防長官は、予想されるイラン支援下の民兵組織による攻撃から米国民の生命を守るため、予防的な行動を取らざるをえない可能性があると警告した。
・1月3日、殺害作戦は実行された…。
(米とイランをめぐる経緯ーまとめ)( https://www.sankei.com/main/topics/main-36360-t.html )
・(2019.12.30)米、イラク・シリア5カ所を空爆 イランが支援する武装組織の拠点
・(2020.1.1)イラクの米大使館に群衆、空爆に抗議
・(2020.1.3)米、イランのソレイマニ司令官を殺害
・(2020.1.4)国連事務総長「世界は新たな湾岸戦争に対応する余裕はない」
・(2020.1.8)イランが報復、イラクの米軍基地にミサイル攻撃
・(2020.1.8)イランでウクライナ機が墜落 180人搭乗
・(2020.1.11)イラン「旅客機を誤って撃墜」
トランプ氏「デモ隊殺すな」 イラン抗議活動を注視(1/12(日) 9:47配信)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200112-00000019-jij-n_ame
トランプ大統領 “脅威 差し迫っていたかは重要ではない”(2020年1月14日 5時44分)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200114/k10012244261000.html