トランプの強気(中国叩き)の背後には「シェール革命」があるのか?

「シェール革命」。最近は、あまり聞かなくなったが、一頃は随分耳にしたよな。

それで、「トランプ強気の背後には、アメリカのエネルギー資源戦略に根本的な影響を与えたシェール革命もある」みたいなネット情報も、目にしたことがあったんで、調べてみた。

テキスト・データ中心なら、このサイトがよくまとまってる感じだ。
学べる「シェールガス」

オレの方は、例によって、ネットで集めた画像中心に構成したいと思う。
※ 画像元のサイトです。
https://www.bing.com/images/search?q=%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%82%AA%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%81%A8%E3%81%AF&FORM=HDRSC2

まず、「シェール」って何? って話しからだ。
頁岩(けつがん)」というものらしい。
こんな感じのものだ。
頁岩、写真_s

素人的には、黒っぽい石炭みたいな岩石で、何やら白っぽいものが挟まっているようだな…、程度の感想しか持てない代物だ。
しかし、この白っぽいものがくせ者で、「油母」というものらしい。閉じ込められた有機物が、まだ充分に油分にまではなっていないが、その原料(または、形成途上の石油・ガス)みたいな感じで封じ込められてる、って感じのものらしい。
「頁岩」自体は、岩石の名称で、別に石油の元たる「油母」が封じ込められていない物のほうが、多いらしい。何か、「硯(すずり)」の材料になったりもするらしい。
石油の元が封じ込められてるものは、特に「オイル・シェール」と言うらしい。

素人的には、「石油が多くある場所には、その石油が染みていって、オイル・シェールというものになることもあるのか…」と、思うが、話しは逆で、「オイル・シェール」に封じ込められた石油の元が、年月や温度・圧力の影響で原油や天然ガス(あるいは、その形成途上のもの)に変化し、徐々に移動して、特殊な地層に貯まっていく…、って話しらしい。

シェール・ガス層、図_s
上記の図で、黒いのがシェール層だ。その上の、黄色の部分が、砂岩の層。灰色が、硬い岩盤の層だ。
シェール層に閉じ込められていた有機物は、ガスやオイルに変化し(あるいは、その形成途上の物質に変化し)砂岩の層の中を移動していって、硬い岩盤の層のすぐ下まで移動する。これ以上は、上には行けない。そして、うまいこと褶曲があれば、その頂点付近の山のてっぺんのところに大量に貯まる…、って話しだ。

そこら辺を説明してる図があるんで、見てみよう。
シェールガス・オイルの成り立ち、説明の図_s

次は、その採掘方法の話しだ。今までの採掘方法(在来型)と比較した、この図が分かり易いんで、これで説明する。

在来型との比較、説明_s

在来型の石油・ガスだと、褶曲の山のてっぺんに溜まってるものをターゲットにするんで、垂直に掘って行って、首尾良く溜まってる部分に当たれば、地層の圧力が掛かっているんで、自噴する。まさに、「ビュー」っと言う感じで、吹き出す訳だ。
これに対して、シェールだと、そうは行かない。一旦は、垂直に掘り進むが、シェール層まで到達すると、今度はその層の中を、水平に掘り進んで行く。
そして、パイプの中に水や化学薬品を混ぜた液体を送りこむんだ。その水圧で、シェール層の岩石にヒビを入れ、岩石に含まれている石油やガス(あるいは、その形成途上のもの)を取り出す、という仕掛けらしい。

そこら辺を説明した拡大図があったんで、これを見てみよう。

シェールガス・オイルの堀方、細部_s

送りこんだ液体の水圧で、シェール層には多くのヒビがはいり、その隙間には液体が入り込んでいるわけだ。そして、その液体には、シェール層に含まれていた石油やガス(あるいは、その形成途上のもの)が溶け込んでドロドロ状態になっている。
すると、今度は液体を送りこんだポンプを逆回転させて、そのドロドロ状態のものを「ズズズー」っと吸い込んで、回収するわけだ。
それを地上まで吸い上げて、地上のタンクローリーに積んで、付近に建設しておいたプラントまで運んで、分離・処理するという、段取りだ。

それだけで、話しは終わらない。プラントで分離・処理した後の「廃水」の地下への埋め戻しの作業も、やらないといけない。下手に河川に流したりすると、新たな公害の元だからな。
採掘のイメージ、廃水の戻し_s

ここまでの話しだけでも、これがノウハウの塊だってことが、分かるだろう。
水圧かけてヒビを入れる時も、どれ位の間隔で穴をあけたらいいのか…、その穴はどれ位の大きさなら一番効率的なのか…、。注入する液体の成分は、どんなものにしたらいいのか…。そうそう、脱けていくガスでできた空間を充填する粒子みたいなものも、混ぜ込むらしいぞ…。そうでないと、地盤沈下したりして危険らしい…。回収した石油・ガス混じりの液体を、分離・処理するやり方…。
なんか見た情報では、石油・ガスに変化させて行くには、バクテリア(嫌気性のと、好気性のと二種類あるらしい…)が関与するんだが、そいつらが働いて空いてる穴を詰まらせこともあるんで、その対策とかも必要らしいぞ…。
そして何より、そこの地層の構造に関する深い知識が必要だ…。なにせ地面の下の話だ…。何本もボーリングして確認してたら、コストが掛かって採算に乗らなくなる…。

それで、シェールガス・オイルは在来型のガス・オイルとは異なり、地下深くのシェール層から新技術で液体を注入して回収するガス・オイルだ…、って話しは、まあ理解できたと思う。

しかし、オレらの関心は、そういう新技術で回収されたガス・オイルが、結局のところ世界アメリカの国家戦略にどういう影響を与えるのか、っていうことだ。

それには、まず、このような新技術で獲得された新たなエネルギー資源が、エネルギー資源大国アメリカの姿をどう変えていくことになるのか、ということから検討してみよう。

まず、ストレートに、アメリカの原油・ガスの生産量の推移から見てみよう。

アメリカの原油・ガスの生産量の推移_s

1980年代半ばから、ずっと右肩下がりだった石油の生産量、ほぼ横ばいだったガスの生産量ともに、シェールガス・オイルの採掘技術が確立された2008年頃から、上昇に転じている。特に、ガスの生産量は、急上昇だ。

こうなって来ると、アメリカは国外から石油・ガスを、あまり輸入する必要がなくなって来るんでは…、という話しになってくる。

次に、アメリカの原油生産と輸入量の推移を見てみよう。

米国の原油生産と輸入量の推移_s

2013年の7月(オバマ政権の2期目がスタートしてから、6か月くらい経った頃だ)以降、生産量が輸入量を上回って、石油を輸入する必要がなくなっている。

そして、2014年には、あのサウジアラビアを抜いて、石油の生産量世界一になるんだよ。

原油生産量、アメリカがサウジを抜く_s

そういうことになったモンだから、大変だ。「オレらの国は、あのサウジアラビアを抜いて、石油大国になったぞー。」って大騒ぎだ。アメリカ人、「世界一」が好きだからな…。
石油の輸入をずっと中東に頼っていて、ちょっと頭が上がらなかった…、っていう鬱屈も大分あったんじゃないのか…。

サウジ以上の石油大国になる、という楽観論_s

なんか、大油田も発見されたって話しのようだな…。

そうすると、各国と比較したアメリカエネルギー資源における優位性は、次のようなものとなる。

石油・ガスの輸入依存度のトレンド、アメの一人勝ち_s

EUとか、中国とか、インドとか、ASEANとか、みんなエネルギー資源の輸入依存度が増すだろうと予測されてる中で、一人アメリカだけがドンドン輸入依存度を下げて行くだろう、という予測だ。まさに、「アメリカ一人勝ち」状態だ。
こういう状況を指して、「シェール革命」と言ってるわけだよ。

何かアメリカばかりが「ラッキー」って話しのようだが、次は、シェール層世界的な分布は、どうなっているのか…、他の国にはそういう「ラッキー」話しは、縁が無い…、ってことなのか、という話しだ。

シェール・ガス、分布図_s

これを見ると、世界的に分布していて、別にアメリカだけにある、ってことではないようだ。
しかし、前述したようにこれの採掘技術は、ノウハウの塊りだ。
アメリカで確立できたのは、在来型の油田が枯れてきた時に、再採掘するために水平掘りの技術が発達したり、地質調査の技術の蓄積があったり、最新のIT技術を取り入れて計算できたりしたからだ。
それと、アメリカ資源に関する法体系も関係したようだ。というのは、通常こういうエネルギー資源や鉱物資源は、法律で国家が所有権を有する、と定められてることが多い。
しかし、アメリカの法体系では、個人の所有権を認めているらしい。つまり、土地の所有者に地下資源の所有権や採掘権を認めているらしい。
だから、シェールの採掘業者が第一にやることは、そういうシェール層がありそうな土地の所有者と採掘の交渉をすることらしい。「お宅の土地を掘らせて下さい。うまく当たれば、利益は折半しましょう。億万長者になれるかもしれませんぜ。」「ほー、そうかね。ウハウハかね…。」って感じなんだろうな…。
実際、当たって億万長者になった人が、ゴロゴロいるようだ…。採掘業者でも、そうなった人がゴロゴロいるようだ…。
人間、欲に突き動かされていると、寝食を忘れて取り組むからな…。
この採掘技術も、石油メジャーが開発したものではなく、中小の業者が開発し、確立したものだ。一山当ててやろうと思って、人生掛けたんだろう…。

それで、シェール層はある、と判定された各国取り組みを貼っておこう。

各国の取り組み_s

こんな風に、検討中とか研究中とか、ばっかりだ。メキシコの「憲法改正」を検討中ってのは、シェール開発に関してはアメリカみたいな法体系にするってことなのか…(調べてないので、分からん)。
肝心の中国だが、埋蔵量では世界一と判定されている。しかし、弱点は、水資源に乏しいことだ。上記の採掘技術の説明からも分かる通り、これの採掘には大量の水資源を必要とする。中国のシェール層があるとされている地域は、内陸で、水資源に乏しいんだよ。
2か月くらい前だったかな、日経オンラインに、「中国で、シェールの採掘に成功!」みたいな記事が載ったんだが、すぐに削除された。裏付けの取って無い飛ばし記事だったんだろう。
だから、当分の間は、商業ベースで採掘されるのは、アメリカとカナダだけ、という状況が続くだろう。

それで、アメリカ国内シェール層の分布を見ておこう。

アメリカ、全土における、分布図_s

右上の図を見ると、シェール層が何枚も重なっていることもあるようだな。こういう部分のところに当たると、「ラッキー」だ。縦坑が1本で済むのに、何回も資源を回収できるからな…。そういう所を狙うのかも、知れないな…。

次は、カナダも含んだ北米全体の分布図を、見ておこう。

北米のシェール層、分布図_s

カナダにも、広く分布しているようだ…。

次は、アメリカの経済政策の予測だ。シェール革命と言ったところで、エネルギー安全保障の観点から他国(特に、中東)への依存度が低下したというだけで、それが国内の景気拡大に直結する、というわけでは無いからだ。極端な話し、シェール採掘業界及びその関連業界が潤うだけ、ということもあり得る話しだ。

そこで、アメリカの雇用者数の推移のグラフを見てみよう。

アメリカ、雇用者数の推移_s

問題点は、明かだ。リーマン・ショック後、非農業部門雇用者数は順調に回復しているのに、製造業雇用者数の回復は、不十分だ。
製造業は、国内を見捨てて、中国やメキシコや東南アジアなんかの賃金の安い国に、移転してしまったのか…、という話しだ。日本でも、プラザ合意後に起きた「空洞化」現象だ。
上の図では、それを中国のWTO加盟を原因にしているが、もちろんそれもあるだろう…。それだけの原因では、無いんだろうがな…。例えば、若者が額に汗して働くのを嫌う風潮になってきた…、とかな…。

しかし、まあ、政策課題としては、何とか製造業を復活させ、一定数の労働者を製造業で雇用できるようにする…、というのは求められていることだろう。
産業の「第三次産業化」が言われるが、世の中の人には向き不向きというものがある。昨日まで黙々と工場で働いてた人に、明日からは「接客業だ。お客様には、極力愛想良く振る舞うんだぞ。」とか言われても、そりゃムリってものだろう…。
また、重い荷物を担いで働いてた人に、「今日からは、介護職だ。お年寄りは、骨がもろいから、気をつけて取り扱うんだぞ。」とか言われても、そりゃムリってものだろう…。
だから、国内に一定数の製造業を確保しておくと言うのは、雇用対策としては、必要なことだと思う。例え、グローバル経済主義には反することになってもだ…。
それで、トランプ政権も中国製品に関税を掛けて、アメリカ企業が中国よりもアメリカ国内で製造するように誘導する政策を取ったり、日本に対してFTAまがいのTAG交渉したりしてるんだろう。
自動車会社では、マツダがちょっとピンチのようだな。今までは、北米市場がドル箱だったが、アメリカ内には工場を設置して来なかったからな…。

前記シェール革命との関連で言えば、関連産業の振興を促進していく経済政策が、考えられる。
パイプラインの敷設の振興とか、シェールガス関連の化学産業の振興とかだ。
シェールガスと聞くと、すぐに燃料 → 火力発電所、とかを連想するが、化学製品の原料という側面もあるんだよ。アメリカの化学産業は、原料の値段が下がって非常に競争力を増してきてる、って話しだ。
日本からも、その安価なガスを狙って、化学製品の製造企業が進出して行ってる、という話しだ。

トランプ政権承認したパイプライン計画の図があったんで、貼っておく。

トランプが承認した原油パイプライン計画_s

後、死角はこのシェール革命が、いつまで継続できるのか、という点だ。
様々な予測を言う人がいる。中には、極端に否定的で「シェール革命と言う話しは、資源あるある詐欺だ!」と言ってる人もいる。
あとは、懐疑的に、「10年と持たないだろう」なんて言ってる人もいる。
確かに、在来型の油田と違って、産出量が低下するのは早いようだ。
まあ、考えてみれば、その地層及び石油の成り立ちからして、石油に成りかけて、未だ石油にまでは成っていない途上のものを、ムリクリ採取してるわけだからな。しかし、この先何千年も何万年も、石油に成るまで待て、と言っても無理な話しだろう。

そういう事で、この先の予測に関する画像を、貼っておく。

米シェールオイル生産見通し_s

これによれば、シェールオイルに関しては、2020年頃がピークで、後はなだらかに減少していくだろう、という予測だ。
それでも、その15年後の2035年頃でも、2013年頃の水準だろう、という予測だ。2014年に、サウジを抜いて産出量世界一になったわけだから、その水準くらいは、維持するだろう、という予測になってる。

シェールガスの方の予測も、見ておこう。

ガス、在来型・非在来型の比較、予測_s

こっちは、凄いな。2040年頃までは、増加し続けるだろう、という予測だ。

もちろん、これらの情報はアメリカの政府機関発表のデータに基づくものなんで、割り引いて見る必要はあるだろう。
しかし、自国の国家戦略の礎になる情報なんで、全くの嘘っぱち、というものでも無かろうよ。
自国に都合の良い情報ばかり見て、不都合な真実には目を塞いで、国家戦略を誤って、「国破れて山河あり」になったどっかの国家みたいなヘマは、やらんだろうよ。

後、懸念としては、環境汚染問題だな…。そこら辺を心配する画像もあったんで、貼っておく。

環境に対する影響、イラスト_s

 ブルーの部分は、地下水脈だ。
 アメリカが農業大国なのは、西のロッキー山脈と東のアパラチア山脈にぶつかって降った降水が、何千年、何万年も続いて生じた巨大な地下水脈があるからだ。
 これを、安価な石油を動力として汲み上げて、灌漑農業をやってるわけだよ。
 それに対して、シェールを採掘するときに注入する液体(化学物質のかたまりだ。おそらく、人体には、有害なものだろう)が流れ込んで、この農業用水を汚染することはないのか…。
 あるいは、分離・処理した後で埋め戻す廃水が、流れ込んで、汚染することはないのか…、という懸念だ。
 懸念は分かるが、「一定の基準を設置して、問題は生じないようにやってます。」と言うしか無い話しだろうな。どんな経済活動にも、つきまとうことだ…。

 後は、CO2増加の懸念だが、シェールの採掘が他の産業に比較して、取り立ててCO2を多く排出するという科学的なデータも、示されてはいないようだ。

 そういうことで、プラスの側面とマイナスの側面を両方勘案しながら、やっていくしかない、という何にでも共通する話しに、落ち着くわけだな…。

 最後に、このシェールの採掘技術は、液体を注入してガス混じりの液体を収集して、分離・処理する、という技術なんで、メタン・ハイドレートからのガスの取り出しにも応用可能なもののようだ。

 それで、メタン・ハイドレート関連の画像を貼って、終わりとする。
メタ・ハイ、採取試験、イメージ_s