リーマン・ショックからもう10年か…  (その2)

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それで、この新金融商品を購入した人々(名だたる金融のプロも含まれてる)が、     なんで信用できるものだと判断したのかということを、検討してみようと思う。
その前提として、この新金融商品はどんな仕組みのものなのか、ということから検討しようと思う。
春山さんの本とか、サブプライムローン問題の解説とかで、よく出てくる用語から検討する。
、まず、MBSだ。Mortgage-backed securities のことだ。「不動産担保証券」と訳されている。Mortgage(モーゲージ)とは、抵当(もしくは、抵当権)のことだ。securitiesは、(複数形で)「有価証券」のこと。まあ、直訳すると、「抵当(もしくは、抵当権で)裏打ちされた有価証券」ってな感じのものだ。
この上位概念が、ABSで、Asset Backed Security の略称だ。「Asset」は、「資産」のこと。直訳すると、「資産で裏打ちされた証券」って感じか?「資産担保証券」と訳されている。
「証券」って何?って疑問も生じるだろうが、ちゃんとした定義は当然ある(法律用語として)が、まあ一般人的には、「いついつまでに、一定の行為を致します」という契約上の債務を「紙(証券)」に表章してる(その証券を呈示すると、四の五の言わずに履行してくれる)モン程度で、OKだ。
一定の金銭の支払い債務を表章してるモンが殆んどだが、「船荷証券」とか、「貨物証券」とか一定の「物」の引き渡し債務を表章してるモンもあるんだよ。
昔は、媒体が紙しかなかったが、今時はみんな「電子データ」化されている。それでも、用語としては「証券」だ。
「債権・債務」のところで検討したように、契約上の債務は、契約を交わした人が履行してくれるかどうかにかかっている。
それだと、履行の実効性の担保が弱いんで、いろんな形でその履行の実効性の担保を図るんだよ。それが、Asset Backedであり、Mortgage-backedであるって話しだ。
、次は、CDO。Collateralized Debt Obligation(コラテラライズド デット オブリゲーション)の略だ。Collateralizedは「裏打ちされた」、Debtは「債務」、Obligationは「証券」だ。
直訳すると、「債務で裏打ちされた証券」って感じか?「債務担保証券」と訳されている。
※ なお、日本語訳だと、どっちも「裏打ち」だが、BackedとCollateralizedは、当然ニュアンスの違いがあるんだろう。
また、同じく「証券」だが、SecurityとObligationにも、ニュアンスの違いがあるんだろう。(Obligationは、「約束したので、履行を強制される」というニュアンスがあるらしい…)。
しかし、別に「渉外弁護士」として外国人との契約の作成業務を行おうというものでもないから、一般素人が気にすることではなかろうよ…。
このCDOが、今回のサブプライムローン問題の主役だ。語の定義からして、「債務を債務で裏打ちして、履行の実効性が上がるのか? 」という点が疑問になるところだよな。
今回、Wikiで調べて分かったんだが、本来は「国や企業に対する貸付債権や公社債といった大口金銭債権を裏付資産とするもの」であったようだ。それが、選りにも選って「サブプライムローン債務」なんかで裏打ちして、それをまた、何で名だたる金融のプロ達がホイホイ購入したのか?
そこに、この問題の核心がある。
、そこで、いよいよ「騙し(表現を和らげれば、説得)」の手口・お膳立ての説明だ。
、「プライム」と「サブ・プライム」を混ぜて、新「証券」を作り出すんだが、その混ぜ方は「金融工学」を適用して、充分にリスク管理がなされている、と説明する。
オレが見たNHKの番組では、コリアン系のアメリカ人が出てきて、「ほら、流体力学の応用ですよ。こうやって、何種類かの液体を混ぜて、かき混ぜれば、いろいろな濃淡のある液体を、自在に作り出すことができるでしょ? 」とか、のたまってたよ…。

CDO仕組み2

※ 「ハンバーグ」、上手い表現だ。
サブ・プライムのハンバーグ

、その「金融工学」は、かのノーベル経済学賞を受賞した経済学者が発明したものだと、権威付けする。
実際、『スタンフォード大学教授だったマイロン・ショールズ氏と、ハーバード大学教授だったロバート・マートン氏という2人の経済学者が金融デリバティブの理論を解明し、デリバティブの評価基準を作り出した功績で、この功績が認められてショールズとこの方程式の厳密な定式化に成功したマートンは1997年のノーベル経済学賞を受賞した(ブラックは残念ながら2年前に病死していて賞の中には入っていない)。』という事実がある。
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ブラックショールズ式
ブラックショールズ式

ブラックショールズ式の解
ブラックショールズ式の解

※ しかし、『このブラック・ショールズ方程式はceteris paribus (セテリスパリブス). 「他の条件が等しいならば」という「与件」(上記でいう「完全市場」の前提のもとに「外部不経済=市場経済の不確実性」を排除したところに構築されたものであったためマイロン・ショールズとロバート・マートンが取締役会に加わっていたロングタームキャピタルマネジメント(略称:LTCM)による「ドリームチームの運用」は1997年に発生したアジア通貨危機と、その煽りを受けて1998年に発生したロシア財政危機によるデフォルト(債務不履行)を機に急速に破たんすることとなりました。』という不都合な真実もあるのだが、そっちのほうは、黙ってて、言わない。

、さらに、箔をつけるために、外部の「格付け会社」を利用する。
格付け会社が格付けした「AAA」」とか、「AAB」とかいう記号は、その格付け会社が国債や社債に対して付けたものと、表現としては同じ表現だったために、無意識に「同じような内容のもの」と認識してしまった。

格付け

、さらに、信用度を増すために、外部の保険会社に依頼して、一定の「保証」までつけて貰った…。

保険会社の保証

まあ、お膳立ては完全に揃ってる感じだよな。上記の詳しい説明は、A4用紙で500ページにもなったそうだ…。
それで、そういうオイシイ話し(ノーベル経済学賞の裏付けがあるローリスクで、ハイリターンな画期的な新金融商品)にみんな騙されて(または、説得されて)、全世界の金融機関がジャンジャン争って購入した訳だよ。

サブ・プライムローンの割合・推移グラフ

しかし、上記の話しには、ど素人のオレが考えても、様々な疑問点・問題点がある。
、「流体力学の応用」で、様々な濃淡のある液体を作り出す話しについての疑問:
そりゃ、「液体」だったら「流体力学」が適用できるだろう。
「液体」は、その性質が一定で、物理法則にいつでも従うからな。
しかし、債権・債務は、そうはいかんだろ。
人の財産状況や、その人の性質(律儀な性格か、いい加減な性格か)にも掛かるからな。
また、その時々の経済状況によって左右される。また、いつ何時病気になったりするかもしれん…。明日をも知れないのが、人の人生だよ…。
、「金融工学」についての疑問:
確率を関数的にとらえるって話しだが、様々な前提条件があっての話しのようだ。
実際に、ロングタームキャピタルマネジメント(略称:LTCM)は破綻している。
この手の理論は、所詮は机上の空論が多いんだよ。
経済学者で金持ちになった人は、いないって話しだ。
、格付け会社の格付けに対する疑問:
国債や社債の場合は、国家や会社がキチンと「財務諸表」を作成して、財産状況を公開してる。代表的な「財務諸表」が、「貸借対照表」と「損益計算書」だ。
「貸借対照表」で「資産」と「債務」を把握し、「損益計算書」で当期の「経費」と「利益」を把握している。
しかし、個人がこんなものを作成しているか? まあ、自営業だったら自分で帳簿を作成してるかもしれんが、せいぜいが家計簿くらいのモンだろ。
それで、どうやって「信用リスク」を格付けするんだ?
だから、彼らがやった手法は、「統計的にリスクを把握する」って手法だ。
要するに、一定期間に支払いを延滞したことがどれくらいあるかっていう指標だ。
しかし、例えば「5年間で、延滞回数が1回」と「5年間で、延滞回数が5回」の人がいたとする。前者よりも、後者が5倍リスクが高いと言えるか?
そうはいかんだろ。なぜなら、経済状況を考慮してないからだ。
特に、住宅ローンの場合は、住宅市場の推移の状況が大きくかかわってくる。これが右肩上がりの時は、リスクが低いが、住宅市場が悪化した場合、一気にリスクが高まる。
そういう事態の変化に、対応できてるのか?

米国個人債務の延滞率

、保険会社の「保証」についての疑問:
保険会社の財務は、大丈夫なのか? その保険会社は、まさかこの新金融商品を買ったりしてはいないんだろうな?
(実際には、購入していてAIG保険とかは、破綻した)

まあ、そんな訳で、右肩上がりの住宅市場は、いつまでも続かず、警鐘を鳴らす記事もチラホラ見られるようになり、疑念が生じて一気に流動性を失いました…。みんな投げ売りするようになり、値段もつかないような状況になりました…。
そういう話しだよ。

米住宅市場の推移

最後に、購入した金融機関がどれだけの額を買って、受けた傷がどれだけ深かったのかを見ておこう。

買った金融機関・イラスト

米系金融のサブ・プライム関連累積損失