『強制執行と債務名義の話し』(その2)

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強制執行に至るには、大きく分けて「民事訴訟手続」と「民事執行手続」とい
う二段階構成になっているという話しは、した。
民事執行手続きは、債権・債務の存否の「争い」から切り離して、一定の文書
が執行機関に提出された時は、有無を言わせず執行するという建て前にしている。
そう言う強制執行が開始される契機(キッカケ)となる文書のことを、「債務名義(さいむめいぎ)」と言う。
まあ、債権債務が確かに存在していることを証明している文書、と言ったような
意味だ。
最も代表的なものは、「確定証明書付き判決正本」だ。
「判決」は、一般用語なんで説明の必要もなかろうと思うが、裁判所に訴状を
提出して訴訟が開始され、ガチャガチャ訴訟手続が進行していって、最後に原告
の請求の当否について裁判所が判断を下したものだ。原告の勝訴の場合は、「被
告は原告に金○○円を支払え。」とかなるし、原告敗訴の場合は、「請求を棄却
する」となる。
「正本(せいほん)」と言うのは、こういう裁判所が下した判決の「原本(げ
んぽん)」は、1個しかなく、厳重に裁判所に保管されている。そういう「原本」
を、裁判所外に持ち出す訳にはいかず、しかしそれだと何かと不便なので、法律
的には原本と同じ効力のある写しを作成して、それで用を足すことにしてある。
こういうものを、「正本」と言う。
「確定証明書付き」と言うのは、日本の裁判制度は、基本的に三審制だ。しか
も、事実審(法律効果の存否に関わる、事実関係を争う審理手続き)を二回まで
はやっても良いことにしてある。
実体法というものの構造は、「法律要件」と「法律効果」で構成されている。
一定の「法律要件」が充足されると、一定の「法律効果」が発生すると実体法の
条文は記述されている。
例えば今まで金銭債権の代表みたいに記述してきた、金銭消費貸借による金銭
債権については、民法587条に条文があって、
「第587条 消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返
還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その
効力を生ずる。」と規定されている。
「法律要件」として分析すれば、
1、当事者の一方(借り手)が
2、種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して
3、相手方(貸し手)から金銭その他の物を受け取ることによって
消費貸借契約が成立して、効力が生じるということになってる訳だ。
だから、貸し借りの対象物は、別に金銭に限らず、「種類、品質及び数量の同
じ物をもって返還をすること」が可能なものであれば、成立する契約だというこ
とになる。まあ、米の貸し借りや、灯油の貸し借りなんかが考えられるのか
…。実際には、金銭消費貸借以外に判例なんかで見たこと無いけどな…。
それと、目を引くのは、「金銭その他の物を受け取ることによって」成立する
と規定されている点だ。こういう、単なる約束(契約)の他に物のやり取りを必
要とする契約を、「要物(ようぶつ)契約」と言う。
だから、この観点からは、天引き契約(100万円を貸し付けたことになって
いるが、実際には利息の天引き(前払い)とか言って20万円を差し引いて、8
0万円しか渡さない。契約上は、100万円貸したことになっていて、利息も1
00万円を基準にして計算する、と言ったもの)が問題になる。確か、判例があ
って(オレも、大昔にやった話しなんで、もはやうろ覚えだ)、契約は100万
円として成立させ(無効ではない)、利息の計算で加算して(天引きされた20
万円は、利息の支払いとして計算する)解決してたはずだ。
こんな風に、実体法の構造が、法律要件 → 法律効果 となっていることから、
債権・債務(権利関係)の存否を巡る争い(訴訟)は、一定の法律要件該当事実
を主張し、それを相手側が争えば、証拠をもって証明していく、というものにな
る。
例えば、100万円の金銭を貸し付けたんで、支払えと主張する場合は、
1、何月何日に100万円の金銭を1年間貸し付ける旨の契約を締結し、
2、利息年5%を付けて返還すると約束し、
3、その時、確かに金100万円を引き渡した
4、しかるに、1年後の何月何日になっても、支払いがなされていない
5、よって、元金100万円と利息1年分の5万円と支払われるまでの遅延損害
金年5%分を請求する、なんてな訴訟を提起して、支払いを請求していく。
被告の方は、契約締結は代理人名義でされているようだが、そもそも、その代
理人として表示されている者には、代理権が授与されていないとか、金は受け取
ったが、借りたものではなく、こっちが貸してた金の支払いを受けたものだとか、
果ては、仮に金銭消費貸借が有効に成立したとして、既に時効(消滅時効)が成
立している、とかいろいろ主張する訳だよ。
そうやって、被告側に争われると、原告としては、契約書を提出したり、銀行
通帳を提出したり、証人を呼んだりして、いちいち立証していく訳だよ。
そういうのが、訴訟手続だ。
裁判所としては、争点を整理して、争いとなっていることを明確にして、期日
を指定して、あらかじめ準備書面(期日にいきなりある主張をされても、即時に
対応できない場合があるんで、主張・立証を書面で準備させる、ということを行
う)を提出させたりして、期日を重ね、判決に熟したと判断した場合は、判決期
日を指定して原告・被告を呼び出して、判決を言い渡す、という段取りになって
いる。
だから、大変なのは、「債務名義」を獲得するまでの訴訟手続の方だ。長く掛
かる場合もある。数年に及ぶ場合もある。
こういう法律要件該当事実の主張・立証を行う審理手続きを「事実審」と言い、
日本の裁判制度では、2回までやっても良いことにしてある。
だから、第一審(1回目の裁判)で判決が出されたとしても、控訴されると、もう一回事実関係を争えるんで、その判決はまだ確定していない、とされる。
一審判決が出されてから、二週間以内に控訴しないと判決は確定すると定めて
いるんで、二週間経っても控訴されないで、初めて判決は「確定」することにな
る。
そういう事情は、裁判所の職員である裁判所事務官が精通しているので、請求
すれば「確定証明書」ってのを判決正本に付与してくれることになっている。
こういう証明書が付いたのが、「確定証明書付き判決正本」というもので、こ
れを執行機関に提出すると、有無を言わせず強制執行が開始されることになって
いる。
強制執行を開始させることのできる文書である「債務名義」は、まだいろいと他にもある。
興味があったら、まあ、ここら辺でも見といて。
( https://saimu4.com/attachment/24194/ )