『家賃収入10億のハズが破産へ。会社員を狙うシェアハウス投資の手口』(その5)

 この話しが、途中になっていたな。銀行側の受けた返り血の記事を紹介したりして、拡散したんで、話しを端折って説明を完成させよう。
 まず、ざっと復習しておく、
1、シェアハウスのオーナーとスマートデイズ社間の契約は、サブリース契約と
いうものだった(オーナーからS社が賃貸借して、それをシェアハウスに申し込
んで来た人に又貸し(転貸借)する、というもの)。
2、S社は、オーナーへの説明としては、「30年間、125万の家賃保証がさ
れる」と言っていて、契約書にもその旨が明記されていた。
3、しかし、実際には、「2017年11月には、一方的に家賃保証の減額をされて
しまい、2018年1月からは、一切の家賃が入ってこなくなってしまった。」という事態になり、オーナーは月々100万からの支払いを要求されるはめとなった。
4、これって、どーなってんの? 法律違反じゃないの?
5、実は、法律違反ではない。民法の特別法の「借地借家法」というものがあっ
て、このケースにもそれが適用されるからだ…。
 なんてとこまで、説明したと思う。それで、話しが債権と物権の話しや、登記
制度の話しなんかに拡散してしまい、収拾がつかない感じになって来たんで、話
しを思い切り絞って、説明を完成させよう。
 Wikiのサブリースの説明が参考になるんで、それを見ながら説明する。
( https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%96%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B9 

 問題点のところに書かれている内容だ。
「(問題点)
サブリース会社が借地借家法による保護を受ける。」ここがポイントで、この
騙しの核心部分だ。
1、借地借家法は、前に説明した通り、弱い立場にある不動産の「賃借人」を保
護しようという法律だ。
 このケースでは、誰が「賃借人」だ? スマートデイズ社だろ? オーナーは、
文字通りシェアハウスを住宅ローンを自ら組んで、建築したシェアハウスの所有
者(持ち主)で、「賃貸人(貸してる人、大家さん)」だ。法律上は、弱い立場
でもなんでもない。当然、借地借家法の保護を受ける立場にはない。
 次のポイントは、ここ。
2、「借地借家法の強行法規性により賃料減額請求を排除する契約は無効である。
すなわち法的には「家賃35年保証」や「契約10年更新」などの契約をサブリース
会社は基本的に守る必要はなくいつでも減額請求を行う事ができる。」
 借地借家法は、基本「強行法規性」がある。民法(民事法)は、一般に任意
法規だ。対等な私人間の、自由な契約(約束)に基づいて権利関係が規律されていく、という建て前になってる。
 しかし、それだと実質的には対等でない者間で不当な約束も締結されがちで、
それに拘束させるといろいろと社会的な問題も生じるんで、一部国家が介入して、
任意性を排除してる(一定の内容を強制する、強行法規としてる)んだよ(利息
も、本来は当事者間で任意に決めてよいはずのものだが、消費者金融(サラ金)
で過大な利息を約束して、大きな社会問題になったろう? あれも、「利息制限法」
っていう特別法があって、強行法規として一旦約束しても、それに拘束されなく
てもいい、と強行法規性を持たせて任意の約束を排除してある)。
 「強行法規」だと、それに反する内容を任意に約束しても、それに拘束され
 ない(法律的には、無効ー効力の無いものーとなる)。
 賃料に関しては、借地借家法32条に規定がある。
「(借賃増減請求権)
第32条
1、建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、
土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又
は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわ
らず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。
ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定め
に従う。
2、建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受
けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借
賃を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既
に支払った額に不足があるときは、その不足額に年一割の割合による支払期後の
利息を付してこれを支払わなければならない。
3、建物の借賃の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受
けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借
賃の支払を請求することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、
既に支払を受けた額が正当とされた建物の借賃の額を超えるときは、その超過額
に年一割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならな
い。」
 まあ、ざっと説明すると、賃料について話し合いがつかない場合は、最終的に
は裁判によって決めるって話しだ。
 この条項も、強行法規なんで、それと内容の異なる取り決めをしても、排除
されて無効になる。
 だから、いくら「家賃35年保証」や「契約10年更新」などの契約をサブリース
会社が約束しても、基本的に守る必要はない(強行法規性により、借地借家法に
反する内容は、無効となるので)。たとえ、契約書に明記してもだ(契約書は、
たしかにその旨約束したという証拠のために記載されるもので、記載したからと
言って、無効な約束が有効になる、というものではない)。
4、「サブリース会社と家主の間に宅建業法は適用されない。」
 ここも、一般の感覚とは異なるところだろう。
 宅建業法とは、宅地建物取引業法のことで、よく世間にある「不動産屋」さん
のことだ。他人の不動産(宅地や住居用の建物・マンション)なんかの取り引き
の仲介をするのが業務内容で、一定の法律知識がないと、いろいろと不都合が生
じるんで、法律が制定されている。
 しかし、このケースのオーナーは、自ら住宅ローンまで組んでシェアハウスの
オーナーになろうという人で、誰かが建てたシェアハウスを取り引きしよう
(借りよう)という人ではない。だから、宅建業法も適用にはならない。
 あと、契約解除の話しも書いてあるが、ちょっと細かくなるんで、省略する。
 話しの要点は、シェアハウスのオーナーは、シェアハウスを建築してS社に
賃貸しようとする人で、事業者だ。銀行から住宅ローンまで借りて、一定の事業
(儲け仕事)に乗りだそうとする人だってことだ。その自覚が、徹底的に欠けて
いる。自分でリスクを取って、儲け仕事をやろうとしてる人にすぎない。
 S社がどんなオイシイことを言っても、それは一般消費者に対するものと決定
的に違っている。「事業者」同士の駆け引きと判断される。
 法律は、知っていようといまいと、法に従って処理される。借地借家法の強行
法規性なんて知りませんでしたと言ったところで、「事業に乗り出すには、
ちょっと勉強不足でしたねえ。」でオシマイとなる。
 まあ、そういう話しだ。